行方不明の姫

□ピアスは誰の物?
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 夏休みなんてあっという間だ。
 この前「やっと休みだ〜」と思ったら「もう学校か」となる。
 そして夏休み明けの学校は毎年猛暑日で、全校生徒が体育館に長時間いると考えると暑さも忘れて鳥肌が立つ。

「校長の話なんて聴いてらんねーよ」
 クーラーがガンガンついたホウオー室は楽園のようだ。
 ここにいるだけで幸せだと思える。
「確かにッスね怜旺さん。でも真面目に朝会出てるバカがいるんスよ」
 ソファでダラーと姿勢を崩す悠真がうちわを扇ぎながら言った。
 今鳳凰でいないのは空と、あと一人しかいない。
「天香サンですね」
 何故こんなときにいないんだか。

 俺は、あの夏祭りの帰りが気になって仕方ないんだ。
 あのあと天香は無事だったのか、さすが妹と思っているだけはある俺。
 葵に訊くと変に思われるかもしれないから、天香に直接訊くしかない。

「校長の『ね』を言う回数を数えてるとか言ってたなァ確か」
 オレも数えようかなァ、と言い青翔は暑ぐるしそうに手のひらで扇ぐ。
 由梨も暑そうにしてるが、腰まで長い髪は結ばないらしい。

「どこ行くんデスか?」
「便所」
 俺は立ち上がると、海斗の質問を軽く流してホウオー室を出た。

「あっつ!!」
 ホウオー室の外は蒸暑くて、その場にいるだけで死にそうな気分になる。
 ずっと涼しい場所にいたから余計に暑く感じる。

 そして俺はトイレに向かわず、そのまま体育館に直行した。
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