SAO

□アオ×ハル×キミ
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例えばあたしがキリトに告白したとして。
上手くいく確率はどのくらいだと思う?
そもそもあたし、一度振られてるしね、キリトはもうアスナと付き合ってるしね、上手くいくわけないっつーの。ばかばかしい。
でも……もしも。
あたしのこんな気持ちを、受け止めてくれる人がいたとしたら。
どれだけ幸せなことなんだろう、って思うわよ。いるわけあるか!
とか卑屈めいたことを考えていたら、きっとキリトが困るから。
あたしは青空に向けて叫ぶことにしたの。
「キリトー好きだー」
生憎青空じゃなくて、しけたカフェの天井が見えるけど。
ダイシーカフェのアップルパイみたいに、甘くてスパイシーな恋がしたい。そう思いながら、そのアップルパイの残りを頬張った。そこに
カランカラン、とベルが鳴る。
「お、またオメーひとりかよ」
サエナイサラリーマンがサエナイ顔で現れた。
「あんたこそ、まーたソロでここ来たのね、クライン」
クラインはあたしの隣の古びたスツールに腰をかけて、マスターのエギルにバーボンを注文した。
SAOのNPCレストランより早く出てきたバーボンを、クラインはネクタイを緩めながらちびちびと呑む。
「かーっ、花の女子高生が、ひとりで淋しくこんな奥まったカフェとは、世も末だな」
「あたしに言うな、どこかの黒バカに言いなさい」
それもそうだ、と言って、クラインはアップルパイを注文した。
「あんたが甘いものなんて、珍しいわね」
「バカ野郎、オメーにだよ。たまには年上らしくな」
「年上……ね」
中身が小学生男子のどこを年上扱いするというのだろうか。まぁ、アップルパイは頂くけど。
うまうま、と本日二切れ目のアップルパイを口に含んでいると、クラインが藪から棒に尋ねた。
「オメーよ、学校にいねーのか?好きなヤツ」
あたしはアップルパイをフォークで大きく切って、ひたすら咀嚼した。たっぷり時間をかけて食べてから、クラインの問いに答える。
「いるわよー彼女持ちな真っ黒クロスケが」
「キリの字以外にいねーのかよ……」
わかってるくせに。嫌味か。
「あんたこそ、そーゆーヒトのひとりやふたりいないの?リアルで」
ずずーっとアイスティーを啜って、ジト目で尋ねる。
するとクラインは頬をぽっと染めて、にやにやとしながら答えた。
「あぁ……まぁ、な……」
「いるのね」
あぁ、嫌になる!このばかでさえ出会いがあるのに、あたしはなんで無いのよ!
クラインは訊いて欲しそうなので、あたしは嫌々質問攻めにしてあげた。
「どこの人?どんな人?美人なの?」
「いやぁ……それがまぁ」
クラインはデレデレになって、話してくれた。
取り引き先の、美人な、年上バリバリキャリアウーマン。
あたしの心の中で、なにかが叫んだ。
やってられるか!
その後あたしは自棄になって、アイスティーをガブガブ飲んだ。お腹が痛くなって、しばらくトイレとお友達だった。
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