SAO

□Sky Abbreviation Output
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ガンゲイル・オンラインといういわくつきのゲームにダイブしたお兄ちゃんを見守り、家で出迎えたあたしは、今度こそと決意した。
ちゃんと告白して、ちゃんと兄妹に戻るんだ。
お兄ちゃんが危ない目に遭って、あたしは痛感した。お兄ちゃんとあたしは、住んでる世界が違うんだって。
お兄ちゃんはソードアート・オンラインで、たくさんの経験を積んだ。
それはあたしが知らないこと。恋や愛、たくさんの人との触れ合い。
あたしも追いつきたい。そう思って、新アインクラッド攻略に参加しているけど……。
経験は、例え同じ経験だとしても、全く「同じもの」ではない。だから、お兄ちゃんと一緒に攻略したとしても、それは「あの頃のお兄ちゃん」と一緒じゃない。
それはもういいの。
仕方ないって、思ってる。
諦めがついてる。
だからこれからは、「これからのお兄ちゃん」と共に歩みたい。
「これからのお兄ちゃん」を、あたしにちょうだい。
って、たぶんだめだろうな……お兄ちゃんには、アスナさんがいるんだから。
「スグ?」
と、帰ってきたお兄ちゃんは、あたしの顔を心配そうに覗く。あたしは慌てて気を取り直して、笑顔を作る。
「おかえり、お兄ちゃん!」
時刻は深夜、というか、ほぼ早朝。例のごとくお母さんは仕事で詰めているので、家にいるのはあたしだけだった。
「ご飯食べるでしょ?スープとチャーハン、作ってあるよ」
パタパタとスリッパの音を鳴らして、あたしはキッチンに向かった。
スープを温めていると、お兄ちゃんが部屋に荷物を置いてやって来た。
「ありがとう、スグ」
そう言って、お兄ちゃんはダイニングの指定席に座り、スープに口をつけた。すかさずお茶を出してあげると、湯のみに手を伸ばす。
お兄ちゃんはようやっと、緊張がほぐれてきたような顔をしている。
あたしはそっと、お兄ちゃんの肩に手をかけて
「がんばったね……」
と囁いた。
するとお兄ちゃんは驚くほど優しい手つきで、あたしの手を握り、
「うん……」
とだけ呟いた。
疲れてるんだな。そりゃあそうだよね、あれだけの大事件の中に巻き込まれてたんだから。
「今日、お風呂どうする?朝入る?」
というあたしの問いに、お兄ちゃんはいつもの声で答えた。
「朝入るよ。今はさすがに、ベッドで寝たい」
テレビも無音のリビングで、食器の音が、カチャリと響いた。
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