SAO

□VS.
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一応言っておくが。
俺はあいつを、受け入れたつもりはない。
いつも余裕な澄まし顔をして、にやにやにやにや。気持ち悪い。気に食わない。
だから俺は、あいつに勝負を仕掛けてみた。
「菊岡サン菊岡サン」
既に何度も訪れている、都内のさっぱりとした菊岡さんの部屋の中。PCとにらめっこをする眼鏡のクソ官僚様に、声をかけた。
「どうしたの、キリトくん」
穏やかなテノール、国語教師然とした口調。
広い背中にべた、と抱きつく。
「いや、仕事と俺、どっちが大事なの!とか言ってみたかっただけ」
どれくらい俺のこと愛してるのかな、とかリサーチしてみる。
菊岡さんは、俺のことを好きだ好きだと言ってはいるし、手を出すこともしばしばある。だけどどこかで、セーブしているように思うときがある。
俺が子供だから?もう今年で18なんだけど。
来年から渡米が決まっているし、そうしたら離れ離れになる。
不安にさせるな、バカ親父。
ぎゅ、と抱きしめながら首を絞めた。
「痛い痛い。痛いよキリトくん」
そう笑いながら、軽く俺の腕を叩く。
殴り合いの恋は飽きてきた。
咬み合うような愛をくれ。
じっくり睨んで、瞬間センチメンタル。痛いほどに愛してほしい。
「菊岡さん」
「なんだい、キリトくん?」
「やりたい」
「僕、まだ仕事中なんだけど」
「知るか」
熱を求める子猫のように、俺は菊岡さんの首筋に口づけをした。
「仕方ないな……おいで、キリトくん」
と、俺を呼ぶその声は、包み隠さず困ったもの。
俺はいつも、こんな感じでこいつを困らせる。その、困った顔が声が、たまらなくクセになる。
俺は素直に菊岡さんの膝にするりと収まり、彼を包んだ。
「キリトくーん……眠いのかい?ベッドに行く?」
「ち・が・う」
「じゃあなに?本当にするのかい?」
「…………」
わかってる。ただ体を預けることだけが、イコール愛してもらうことではない。
だから、悔しい。
どうやったら、愛を手に入れられるのか。どうやったら、菊岡さんのすべてを手に入れられるのか。
こいつの全部、俺のものにしたい。頭からつま先まで、俺でいっぱいにしたい。満たされたい満たしたい満たされたい。
狂ったように求め合い、貪るような。
「……っ!」
俺は、狂犬のように強く荒いキスをした。
これで、俺の気持ちが伝わるのなら。
一部でもいい。もちろん全部。
伝播する気持ちが、あればいい。
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