SAO

□水-water as Asuna-
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水……わたしは水だ。
【あなた】の為に変わっていくもの。
ときには【あなた】を想って海になり、
ときには【あなた】を願って川になり、
ときには【あなた】を祈って雨になる。
わたしは水。あなたの為に、水になるの。


大学生になったわたしは、とにかく毎日が不安だった。大好きな和人くんが、夢を追ってアメリカに渡ったから。
応援する気持ちはもちろんある。だけど。
和人くん、妙にモテるからなぁ……女の子が寄ってこなきゃいいんだけど。
愛されている自覚はあるし、信じている。でもね、女の子って、無駄に不安になるものなの。
和人くんはできる限りの時間を使って、毎日電話をかけてくれる。彼との話の中では、女の子の影は見え隠れしないけれど。
まぁ、そんな不安も夏の暑さも吹っ飛ぶくらい、今日は嬉しいニュースがある。
和人くんが、夏休みで帰ってくる。
冬休みは課題があって帰ってこれなかったけれど、向こうの夏は学期末。たくさんお出かけしたい。
ユイちゃんも楽しみにしていた。三人で会うのは、本当に久しぶり。和人くんはアミュスフィアを持っていったのに、ALOにほとんど現れなかったからだ。
わたしは成田空港に向かって、電車に乗った。自宅のある世田谷から、およそ1時間揺られて、空港にたどり着いた。
旅行で出かける人々で賑わう搭乗口とは反対に、到着口は人の往来が少なかった。
それもあって、すぐに見つけた。相変わらずの黒いTシャツに、オリーブ色のカーゴパンツ。黒い大きなスーツケースを引いている、黒髪の青年。
「キリトくん……!」
和人くんは、いつものシニカルな笑みを見せて、空いている左手を軽く挙げた。
「ただいま、アスナ」
わたしは人目をはばからず、和人くんの胸に飛び込んだ。
懐かしい……愛おしい香り。温もり。
「おかえり……おかえり、キリトくん!」

実家に帰るという和人くんと電車に乗って、川越を目指すわたしたち。
その間、携帯電話でユイちゃんと久しぶりの会話をした。
もっとも、ユイちゃんは和人くんが作った専用のパソコンにいるので、和人くんとはいつでも話しているのだが。
三人でこうして話すのは、実に二年ぶりだ。
「それにしても……キリトくん背が伸びたね」
わたしとほとんど変わらなかった身長だが、今や頭一個分くらい差がある。
「急に成長期がきたんだよ」
と笑うその顔も、雰囲気もどことなく大人っぽい。そういえば、最近は眼鏡をかけている。
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