炎鎖の旅人

□1章 氷との出会い
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≪001≫


 見渡す限りの青海。
 偉大なる航路(グランドライン)。

 どこまでも続く青の中を、ドクロマークを旗に掲げる船が1つ、北に進んでいた。
 甲板では、ひときわ体格のいい男が、見張り台を見上げ、声を張り上げている。

「と、いうことは!次の島までは、あと1日もすりゃあ着くってことだな!?」

「はい、船長!!早ければ朝にでも!」

 上から届いた返答に満足げに笑うと、船長と呼ばれた男は、酒瓶を取りにキッチンへと向かっていった。

「………」

 その様子を、海賊旗の陰で日差しを避けていた赤髪の少女は無表情で見つめていた。興味がなさそうで、どこか呆れたようなまなざしだ。

「メルル!せっかくだ!明日で別れってんなら、今日はお前も飲まないか?」

 近づいてきた船員(20前半ぐらいに見える男だ)に声をかけられるも、メルルは無言で首を振った。

「そう言うなって!な?」

 名前も覚えていない青年に腕を掴まれ、メルルは渋々、宴のなかに連れていかれたのだった。


 この2ヶ月間の滞在の間、1度も酒の席に参加しなかったメルルに、周囲はいつも以上に、よく笑い、よく飲みふけった。

「メルルよぉ、もっと笑ったら可愛いぞぉ?」
「そうだぜ!ほら、いーっ!!」
「飲んでも、顔には出ないのかー」
「お前は出すぎなんだよ!」

 あちらこちらから聞こえる笑い話に、メルルはグラスを傾けた。

 メルルがこの海賊団に渡り、2か月になっていた。
 その短期間の馴れ合いだったが、部外者のメルルから見ても、ここは仲も良く、世話やきの多い、居心地のいい船だった。

 メルルは、目的へと向かう海賊船を乗り継ぎ、旅をしている。
 過去の船の中には、ただの荒くれ者の集団や、平和そうに見えて裏では人間関係のもつれが絡まっていた海賊団もある。
 常に船員とは特別に親しみ合わないと決めているメルルにも、同じ空間にいやすい、いやすくないと思うことはあった。

 この船は、いい場所だった。

 そう内心、小さくつぶやき、目を細めた。

 空ではカモメが1羽、大きく旋回していた。
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