勇者がヘタレで臆病な場合。

□五話目
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西の森

「この森の道を真っ直ぐ進めば集落に着くみたいだよ。」
勇者アミルは地図を見ながら歩いていた。
西の森は森と言うより森の中の街道のように真っ直ぐに道が続いていた。
アミルは地図を鞄に直して前を向いた。
「あ、勇者さん。ここの分かれ道の先に川があるみたいですよ。」
隣を歩いていたジェミニが道の先の小さな分かれ道を指差す。
看板が立っていて←集落│川→となっていた
「少し休憩しましょう。」
「あれ?珍しいね?魔法使いさんが自分から休憩しよう何て言うの。」
「僕が疲れたからです。」
「つまりは気まぐれなんだね」
アミルは溜め息を吐きつつ川のほうへ向かった。
歩いていくとその川は見えてきた
「うわぁ…」
その光景は美しかった。
朝日が昇り、日を浴びた木葉は淡い黄緑色に輝いており。
川の水は蒼く深い色を湛えていた、しかし水を掬おうと水に手をつけると案外浅く。
足を浸ければくるぶしまでしかなかった。

不意に、風を斬る音が聞こえた。
振り向くと其処には金色が見えた
剣を振るって風を切っていた。
恐らく鍛錬なのだろう
ふとその人は剣を振るうのをやめて手の甲で汗を拭い、息を吐いた
そして
「なんの用?」
アミル達の気配に気づいていたらしいその人は振り返ってそう訊ねてきた
アミルは其でハッとした
「どうしたんですかアミルさん。恋ですか?ホモォですか?」
「ちょっと待って!?どうしてそうなったの!?」
「いえ、彼に見とれていた様でしたので。」
「それだけで!?て言うかあの人男の子だったんだ!?髪しか目に入って無かった」
「成る程…髪フェチですか。」
「だからなんで!?」
相変わらずのボケとツッコミだ。
もはや金髪の人をおいてけぼりにしている。
その時
「プッ…ククク…!!」
アミルとジェミニが振り返ると、金髪の人が吹き出した。
「え…えっと…?」
「ああ…ごめんごめん…えっと…?」
困惑した様子のアミル、しかし金髪の人は涙を目の端に浮かべるほど笑いながら二人に名を訊ねた
「あ、うん。僕はアミル。アミル・アルフレイド…其で…この人は」
「ジェミニです。ジェミニ・リベルザと言います。」
金髪の人は二人の名前を柔和な微笑みを浮かべつつ黙って聞いていた
そして二人が名前を言い終わると
「アミルに…ジェミニか…そっか。俺はシエル。シエル・ミーリスって言うんだ。」
と、彼も自己紹介した。
「そっか…じゃあシエル、この先の集落のこと知ってる?」
「うん。俺そこに住んでるし。」
「現地の人だった」
思わず馴れ馴れしく突っ込んでしまうアミルだが、シエルは微笑んで流しつつ
「よかったら案内しようか?」
と、笑った。
「あ、うんお願いしま…どっち行ってんの!?」
「え?集落?」
「集落あっちの道だよね!?」
そうアミルが言うとシエルは考えて
「ああ…そっか…ごめんアミル、ジェミニ。そっちは偽物で行っても何もないんだ。」
と、一言謝罪を入れつつ。
「集落の人は余所者を嫌ってるみたいでさ、此方だよ。着いてきて。」
と言ってシエルは小道を指差してあるきだした。
此が彼との出会いだった。

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