勇者がヘタレで臆病な場合。

□十一話目
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村長の家。シエルの部屋

アミルは、ジェミニと共にシエルの部屋にいた。シエルの旅支度の手伝いのつもりだったのだが……
「うん、これで良いか。」
「いや、流石に少ないよ?」
思わずその荷物の少なさに突っ込んだアミル。
シエルは着替えを少し持っただけだった。
ジェミニは完全に呆れている。
「良いですか?シエルさん、外には凶暴なモンスターも居て危険なんです。武器も持ち歩かずに村の外に出るのは危険すぎます。」
と、ジェミニが言うとシエルは少し考えて、部屋の外に出た。
「ちょ…ちょっとシエル!?」
アミルが追い掛けるとシエルは廊下を少し進んだ先にある、可愛らしい花の飾りが掛けてあるドアの前にいた。
恐らくそこは誰か女の子の部屋なのだろう。
その部屋を

「どーん。」

シエルは何の躊躇いもなく開けた。
「ちょぉおおおおおっとシエルさん!?」
思わず絶叫したアミルである。
アミルは純粋な男の子で、女の子の部屋に入るのを躊躇う感じの齢15の少年なのだ。
シエルは堂々と部屋の中に入っていった。
アミルとジェミニがそっと覗き込むとシエルは部屋のベットに立て掛けてある二本の黒い鞘の剣と茶色い鞘の剣の内、茶色い鞘の剣を取った。
部屋の主は不在のようだった。
シエルが何かを呟いていた気がした。



村長の家から出て、会話がいつのまにか途切れていた事に気付き、気まずくなったアミルはシエルに話を振った。
「ねぇ、シエル。さっきの部屋は誰の?」
聞くとシエルはすぐに答えてくれた。
「シエラの…妹の部屋…らしい。」
「へぇ…シエル妹居たんだー…!!………ん?らしい?」
最後にまるで誰かから聞いた話と言うような言い方だった。
それにジェミニさんがぴくりと反応する。
「…………妹さんがいらっしゃった事を…覚えて無いんですか?」
何処か冷たい言い方だった。
思わずアミルは震えた、今の会話は悪ふざけなどの日常的な会話ではないと何となく察した。
「…………覚えてない。実際に記憶が一部途切れてて…妹が居た記憶とかもすっぽり抜け落ちてる。………でも、村の人は皆覚えてるみたいなんだ。」
頭痛がするのか、シエルは頭を押さえている。
「…………。」
「…………。」
二人はなんと言うか…ジェミニはピリピリしていてシエルは困惑していて、微妙な雰囲気だ。
そんな二人に挟まれて、気まずくなったアミルは再び話題を出す
「そ、そういえば…シエルの妹一回も見なかったなー…ど、何処にいるの?」
ちょっと無理に考えた感じが否めない。
「……………居なくなった。」
シエルは俯きながら答えた。
アミルは「え?」と首を傾げた。
「東側の…二人と初めてあったところを北に上がった所の森に行って…俺だけが倒れてたらしい。」
シエルは思い出そうとしているらしい、しかしやはり頭痛がするのか、頭を抑えている。
アミルはとりあえず何か話題を出そうと
「じゃ、じゃあさ!!手掛かりを探して見ようよ!!」
「え、でも…」
「いいから行きますよシエルさん。」
「え…待って…道わかるの?」
その言葉に二人は止まり
シエルを振り返り
「「勘。」」
と声を揃えて答えた。

シエルは絶対迷うな…と確信した。

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