勇者がヘタレで臆病な場合。

□十七話目
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「たしか、行方不明になる前に遊んでたのがこの付近だったんだっけ…」

とアミルは花畑の中央で呟く。
確かに花畑の中には小さな子供のものだろうと推測できる足跡がいくつもあった。
ジェミニはシエルを振り返る

「さて、シエルさん出番ですよ」

「?」

シエルはジェミニの言葉にこてん、と首を傾げる。
ジェミニはその様子を呆れた様にため息をつきながら見つつ、シエルに近寄る。

「良いですか? 精霊に語りかけるんです。得意でしょう? 貴方の友人を呼べばいいんですよ?」

「アミル?」

「違います、普段は見えないお友達です」

「? …うん? わかった?」

分かってなさそうだが、シエルは頷いた。
そして辺りをぐるりと見回して、目を閉じる。
ジェミニが近くに腰掛けたのを見て、アミルも座る事にした。
ふ、と風が吹いた。
その風は暫くの間、こちらの様子を伺うようにくるりくるりと回っていたが、暫らくするとシエルの方へと近寄っていった。
そして、それは人の姿を取り、シエルの目の前に現れた。
緑色のオカッパ頭に、青いバンダナ。
土で汚れたベージュ色のいかにも作業用に見えるズボンに、袖の捲くられた白いシャツ。
顔はシエルの方を向いていて見えない。

「やぁ、呼んだかな?」

穏やかな声だった。
その姿や声から性別を感じる事は出来なかったが、10歳位の子供の姿をしているのは確かだった。
隣でジェミニが頭を抱えた。

「わー! コダマだー!! 久しぶり!!」

シエルが笑顔ではしゃぎ、コダマと呼ばれた精霊と握手を交わす。
ジェミニが噎せてげほっげほっ、と咳をする。

「ど、どうしたのジェミニさん…」

と、アミルが心配そうにジェミニの背を摩った。
ジェミニは蹲ったまま、酷く咳き込む。

「…とんでもないものを呼び出してくれましたよ彼は…げほっ」

ジェミニが咳き込んでいる間にシエルとコダマの会話は進む。

「あのね、俺達今人探ししてるんだ。」

「ん? それは私の家の人の子かな?」

「? 難しい事は分からないけど多分そうじゃない?」

「ならば、私が役に立つだろう」

アミルは二人の会話内容が噛み合っていないのに苦笑いしながらジェミニの背をさすっているが、ジェミニは二人の会話に「でしょうね…でしょうね!!」と反応している。

「ジェミニー! アミルー! 道案内してくれるって!!」

シエルが両手をぶんぶんと振って二人を呼ぶ。
ジェミニがゆらり、と立ち上がりながら

「二人共、後で説明しますからね? 僕だけこの世界の常識知ってるなんて胃痛ですからね? 画面の向こうの人も今頃訳が分からなくて首をかしげていると思いますよ」

「もう、なんかメタ発言が当たり前すぎてどうなんだろう。」

3人は精霊に導かれて、ある洞窟の中に入っていった。
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