勇者がヘタレで臆病な場合。
□十八話目
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「さっきのは矢張り回復系の魔術ですよね?」
暗い洞窟を、入口に戻りながらジェミニは少女に訊ねる。
少女はノエル・ディアボリカという名前だと語り、ジェミニと魔術について会話に花を咲かせていた。
「はい、私小さい頃から回復系や治療系は得意だったので」
「僕とは逆ですね」
「ジェミニさんは何が得意なんです?」
「殆ど攻撃系ですね。水属性との相性が一番いいんですけど、火属性を使いがちです」
二人の会話内容についていけないアミルは前方を見る。
傷が塞がり、すっかり元気になった様子のシエルが、行方不明になっていた女の子を肩車して、狭くはないが広くもない洞窟内を駆け回っている。
「わー! 高いね!!」
「高い!」
「きゃー!! おてて離さないでー!?」
「あわわ、ごめんね?」
二人の様子が微笑ましいからか、アミルはクスクス、と笑った。
道の先に光が見え始めるとシエルは肩車したままその方向へ駆けていく。
「あーっ!! 転ばないで下さいよーっ!?」
シエルが出ていったのをノエルが追いかける。
そして、ジェミニも珍しく楽しそうな表情で駆け出す。
「ほら、行きますよ勇者さん」