勇者がヘタレで臆病な場合。
□十九話目
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「さて、これから僕達は西へ向かいますが、貴女はどうするおつもりですか?」
チェックアウトを済ませたジェミニは腰に手を当てて、ノエルに問う。
ノエルはシエルが半分寝かけているのを起こしつつ答える。
「あ、皆さんについて行っても良いですか?」
「うん、いいよ」
ジェミニが相談を持ちかける前にアミルが答える、まぁそう言うだろうなと予め予想していたジェミニは肩を竦めて「だそうです」と言った。
「わぁ…!! 有難う!!」
と、笑顔で喜んで見せたノエルはアミルの手を引いて駆け出した。
随分とはしゃいでいる様子で、アミルは半ば引き摺られている状態だった。
「…シエル」
2人を追いかけようとしたシエルは呼び止められて振り向いた。
ジェミニの表情からは相手の感情を窺い知ることなど出来ないだろう。
シエルが普通であったなら。
「…貴方には、あの日貴方が宿を抜け出した日に、ある程度の常識を教えたつもりです」
「うん。」
シエルが教えられたそれを理解したかは定かではないが、肯定し何を言いたいのかきっと、理解した上で首を傾げるシエルにジェミニはそっと懺悔する様に言葉を零した。
「…何れ、必ず教えます。だから…貴方達はまだ無知のままでいてください。」
「…うん。」
シエルはその様子を、記憶の中の誰かと重ね合わせながら、頷いた。