はつ恋

□1.桜の散る頃 の段
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【 1.桜の散る頃 】


「土井先生っ!女のっ、お客さんですよっ!」


物凄い勢いで滑り込むようにやって来たのは我が学園が誇るへっぽこ事務員の小松田くんだった。何をそんなに慌てたのか分からないが"女の"という言葉に山田先生が反応する。


「へぇー。半助、やるじゃあないか。」

「…いや、心当たりが全然ありませんけど…。生徒の母親でしょうか?」

「だよなぁ。」


ずるっと効果音が出そうな程、あっさりとそう言われ若干悲しくなる。まあ、山田先生とは殆ど一緒にいるわけなんだし、忙しすぎてそんな暇ないのは百も承知なんだろう。


「で、誰の母君なんだ?」

「そ、それがっ!兎に角、見たらわかりますっ!」

「?」


やはり、誰かの母親らしい。小松田くんが何故か慌てまくっていたので、もしかして、何かあったのかも知れないと急いで向かったけれど、待っていると言われた場所には誰もいない。


「小松田くんめ。場所を間違えて教えたな。」


呆れてとりあえず部屋へ戻ると山田先生はおらず、まあ、急ぎならまた誰かが呼びに来るだろうと、先程のテストの採点の続きをしていた。


「イタタタ。教えたはずだ〜っ!」


それは、あまりの平均点の悪さに胃痛が酷くなり、医務室に薬を貰いに向かう途中のことだった。






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