はつ恋
□1.桜の散る頃 の段
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「誰か、いませんかぁーっ?助けてくださーいっ!」
「?」
助けを求める女性の声がした。辺りを見回し、気配を探るとどうやら喜八郎の掘った落とし穴に落ちた人がいるようで。
「今、助けますよ。」
どこかで聞いたことあるような、それでいて知らない声に、誰だろう、こんなところで何やってんだ?とは思ったが喜八郎の罠に掛かって助けを求めるくらいだ。危険なやつじゃないことは間違いないだろう。
私は穴を覗きその人物を確認しようとするけれど、分かったのは声や着物、髪が長そうな事から女性だろうくらいで。上を見上げるその人は眩しいのか手で光を遮るようにしているため顔はよく見えなかった。
「お願いします。」
落とし穴はそこそこ深く、手を目一杯伸ばすと彼女の柔らかいそれが私に捕まる。女性に触れること事態がかなり久しぶりでその柔らかさにドキッとした。
「いいですか?引き上げますよ。」
平静を保ちながらそう声を掛けて思いっきり引っ張ると思っていた以上に軽くて…彼女は私を押し倒すような形でドサッと勢いよく飛び出した。
「イタタタ。」
「大丈夫ですか?」
「あっ、はい…。」
驚いて閉じた目をうっすら開けると、ちょうど彼女は手をついて上半身を起こすところで。乱れて顔を覆い隠していた長い髪を片手で耳にかける。
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