忍恋
□1.再会と縁 の段
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二月も中旬に差し掛かり、寒さが一層と厳しくなってきた。
「で、あるから…。」
夢を見た。過去の夢。辺り一面の霜柱を「幻想的で綺麗よね。」と言った彼女は冬が一番好きな季節だったな…。
「…と、こういうことである。」
カーン。とヘムヘムが鐘を鳴らす。「今日はここまで。来週、テストするから復習しておくよーに。」と言うと足早に教室を後にした。
「せんせーい!」
「…なんだ、きり丸、乱太郎。」
「あーん、二人とも待ってよぉ。」
「と、しんべえ。」
教室を出る私を追いかけて来た三人にイヤな予感がした。立ち止まると私の前に回り込んでこちらを見あげる。
「今日、なんかおかしくないっすか?なんか、上の空っていうか…。」
「私も思いましたー!」
「…お前らなあ、授業を聞かんで人の事観察しとる場合かっ!」
こんなことばかり長けている彼等に私は頭を押さえ大きくため息をついた。
正直、触れてほしくない話題だ。私は夢に出てきた彼女の事を、過去を思い出していた。自分でも、今さらなんでだろうと思ったが、生徒に感づかれるなんて…気がつかないうちに感傷的にでもなっていたんだろうか…。
「うっ、話そらさないで下さいよっ!」
「そうですよぉ!」
こうなってしまうと、しつこいからなあ。どうやって誤魔化そうか。
「土井先生〜。お客様ですぅ〜。門のところでお待ちでーす。」
「小松田くん!と、いうことだ。また今度な。」
彼らの「えーっ!そんなあ!」という言葉を背に門のところへ向かう。それにしても、私を訪ねてくるなんて…誰だろう?
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