忍恋

□2.彼女への疑念 の段
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彼女が目覚めたのはそれから三日後の事だった。

あの日、新野先生は彼女を診ると慌てて治療に取り掛かった。ひどく内臓を痛めているらしく、私に瀕死の重傷で今夜が山だと告げた。


「今の状態で出来ることも殆んどありません。後は彼女の生命力次第です。」


新野先生の言葉が信じられなかった。

学園長先生には、旧友で身寄りがないため私を頼ってきたのだろう、傷の具合からして追われているのかもしれない、と話したがあっさり彼女の滞在を許可された。

それから、授業以外はこうしてずっと彼女についていた。


「私…まだ、生きて、るの?」


目が覚めた彼女は自分の状態を自覚していたらしい。


「いっ…つぅー。」


体を動かそうとしたのか。首もまともに動かせないだろうに。その声を聞いて新野先生が「まだ寝ていないと駄目ですよ。」と言った。


「だ、誰っ?」

「私は校医の新野です。貴方はここに来て三日間、生死をさ迷っていたんですよ。」

「…では、あなたが治療を?あの状態の私が生きてるってことは…あなた、とんでもない名医ね。」


やり取りを黙って見守る。彼女は助けを求めにきたのではなかったのか。彼女の意図がわからず疑念を抱く。




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