忍恋
□6.くノ一な彼女 の段
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屏風が取り払われ、僕は初めて彼女に会った。
目があった瞬間、息をするのを忘れた。
「初めまして、だよね。その制服の色は…六年生?」
「あっ、は、はいっ!六年は組の善法寺伊作といいます。」
「伊作くん、ね。」
ふわりと笑う彼女に見とれてしまう。綺麗だとか、美人だとか、色々と彼女を形容する言葉はあるけれど、私は伏せられた瞳の儚げなその雰囲気に何故か危険だと感じた。
「もう、大丈夫なんですか?」
「ええ。見ての通り、起き上がれるくらいには。でも、やっぱり腕が使えないのは不便ね。」
苦笑いを浮かべる。自分でしたのだろうか。不恰好に首から下げられた三角巾では左手はうまく吊れていない。それに、問題はそこだけじゃなさそうだ。首まで包帯がしてある。まだ座っているのもやっとという感じなのに。
「まだ、横になってた方が良さそうです。」
「でも、そろそろ学園長先生にもご挨拶をしないと。ねえ、もし忙しくなければ連れていってくれない?」
私はそれには答えずに彼女に近づき「これを先に直しましょう。」ときちんと腕が吊れていない三角巾をし直す。
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