忍恋

□9.恋心ときまぐれな彼女 の段
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「い、伊作っ!起きろっ!」

「ん、朝からなんだよぉ。」


すごくいい夢を見ていたのに。僕はまだ目を閉じたまま返事をした。
彼女が僕に抱きついて、好きだと言った。すぐに夢だと分かったが、あんな美人にそんな風に想いを寄せられて心地いい内容には違いない。


「お前なぁっ!」

「だから、どうしたの?」


仕方なく目を開ける。布団をぎゅっと抱き締めると、ふにっと布団ではない感触を手が感じる。


「んっ…え?」

「んーっ、もちょっとぉ。」

「えええええーっ!!」

「はあー。」


留三郎は頭を抱えてため息をついている。
僕は抱き締めたものが、布団ではなく彼女だと知り飛び起きようとするが、しっかり抱きつかれ出来ない。いつの間にか彼女は僕の布団に入ってきていたようだ。
ま、さか。抱き合っていた?ふにって…何触ったんだ…。顔がみるみる熱くなる。


「と、と、と、留三郎っ!」

「…なんだ?」

「ど、ど、ど、どうなってんの!?」

「…俺の方が聞きたい。兎に角、起こして出てこい。」

「…あっ、いや、ちょっと…あの、無理っぽい。」


苦笑いで言う僕の言葉を理解したのか、留三郎は呆れている。
だって、朝だしっ!だ、抱きつかれるしっ!(たぶん)胸触っちゃったし!こんなの、誰だってそうなるじゃんよっ!


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