雑渡さんと一緒っ!

□三章 尊奈門の思い の段
1ページ/7ページ



本当に、姉には困ったものだ。
見た目は美しいが、とんだ跳ねっ返りでどんなによい嫁ぎ先の話が出ても頑として受け付けない。想う人がいるのかと父に聞かれれば肯定するものの、けして名前は口にしない。一時は不倫でもしているんじゃないかと一騒動起こしたほどだ。


「姉さん。…何してるの。」


なぜか、道筋から外れた草むらにキョロキョロと明らかに迷っている風な姉を見つける。
姉が向かっていると文が届いたが、遅いから迎えにいってやれと小頭の山本陣内さんに言われて探していた。村までの道は確かに複雑で分かりにくいけれど、もう何度も来たことがある道をまさか迷子になるなんて。


「あっ!丁度よかった!具合の悪そうなおじさんを助けたら、道が分からなくなっちゃって。」


偶然、会ったとでも思っているのかあっけらかんとそう言う彼女に怒る気にもなれず、ため息が漏れる。この辺は最近、物騒だから無事に見つかって安心した。ふと、姉を見ると頭には見慣れない髪飾り。何処かで見たことがあるような。その視線に気がつきそれを手にとって見せてくれる。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ