彼岸花

□5.笑えない冗談 の段
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伊作があの夜、彼女を部屋へ送ってから数日がたった。

毎日のように医務室で二人が会っていることは知っていたし、これからのろけを聞かされることになると思っていたのに、何故か今までうざったいくらいに聞かされていた彼女の話をパタッとしなくなった。うまくいったのなら、いいと思っていたけれど度々何かぼーっと考えているような顔をするのでそれが気になった。

その日、俺は課題を終わらせてまとめた報告書を提出してきた帰りだった。随分と高いところから聞き覚えのある声がするので、何事だ、と目を向けて焦った。


「動かないでね。もうちょっとだから…っ!」

「お前っ!そこで何してんだっ!?」

「えっ?あ、あの、猫がっ!」


そう言われて彼女の目指す先を見ると、そこにはどうやって登ったのか、結構高い木に上ってしまい降りれなくなったのであろう子猫と途中から梯子が届かず木の枝を伝い上に登る小平太の妹名無しさんがいた。忍び装束を着ているだけでまだ素人と変わらない彼女があんなところから落ちたら確実に大怪我をする。





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