彼岸花
□6. つまらない午後 の段
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変わった女だ、と思った。
「ちょっと、待って下さい。」
何時ものように、たいした理由もなく留三郎と喧嘩になった。いや、いつも留三郎が悪い。
もう、見馴れてしまった光景に誰も止めにはいることもないはずがその日は邪魔が入る。まるで、留三郎を庇うように間に立ちふさがったのは最近よく見かけるようになったくノたまだった。その女は、怖いのかちょっと震えている。
「なんだ、お前は。邪魔だ。」
「名無しさん、退け。怪我するぞ。」
「嫌です。」
なんだ、留三郎は知っているのか。女に助けられるなんて情けないやつめ。そう思っていると後ろから仙蔵に肩を捕まれる。
「文次郎、女に手を出すのはいい趣味とは言えんな。今日はやめとけ。」
「…勝手に割って入ったんだろ?」
不機嫌に女を睨み付けるとこちらの気迫に震えながらも対抗するように睨み返してくる。その凛とした眼差しが気にくわない。それでなくても朝から、しとしと降る雨で的割りつくような湿気に苛々していたのに。ちょうど憂さ晴らしが出来ると思っていたらこれだ。
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