let go...

□6.追想 苦しいだけの恋 の段
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「お疲れ様です。」

「名無しさんさん。…いつも先に寝てていいと言っているのに。」


それから一週間が過ぎた。
大量の発注を受けて優作さんは毎日忙しく休み返上で働いていた。私も、覚えることが多く彼と会えるのは夜、寝るときに部屋へ帰ってきたときだけ。遅くなる彼を待って少し話をするのが日課になっていた。


「明日で一つ大きな仕事に片がつきそうなんです。明後日から少し休みをとってあるんです…どこか、行きませんか?母には言ってあるので家のことは心配しないで下さい。」

「でも、お疲れなんじゃ…。」

「だから、あなたと二人きりで過ごしたい。実は家にいると仕事の事が頭から離れなくて。…雨が上がったら、温泉にでも行きましょう。」

「そういうことなら、喜んで。」

「…。名無しさんさん。」


布団の上に胡座をかいて座る彼は少し緊張した面持ちで並べられた隣の布団に彼と向かい合って正座をしている私の肩を掴むと遠慮がちに引き寄せる。それに答えるように瞳を閉じるが彼の鼻先が触れて、止まる。不思議に思っていると、そのまま私を自分の腕の中へ納めた。




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