伝えたいから伝わらない の段
□伝えたいから伝わらない の段一
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一月も中旬に差し掛かり、慌ただしかったのがいつもの日常に戻ってきたところだった。
学園長がいきなり新しい事務員を連れてきたのは。
新しく事務に入った彼女、名無しさんさんはふんわりとした優しそうな雰囲気の可愛らしい人で僕と気が合うかも!と期待していた。けれど、実際は誰よりも厳しい…。現実はそんな甘くないんだなあ。
「小松田くん!また数間違えてる!!」
「あっ、すみませぇん。」
「…はあ。ホントにいい加減にしてくださいよっ!あなたのミスの後始末で私の仕事が終わらないじゃないですか!」
「ごめんなさぁい。」
名無しさんさんが泣きそうな顔になったように見えた。
僕が「どうしたの?」と声をかけると一瞬ビクッとした後、大きなため息をつき「もういいです!」というと出ていってしまう。
いつも怒ってて疲れないのかな?と心配になる。
僕は怒られなれているからそんなに気にもならないけれど。
彼女が出ていったので、入門表のチェックをしていると侵入者の気配を感じて急いで向かった。
「入門表にサインしてください!」
「あっ、すみませーん。これ取ってただけなんで。」
そう言って、バトミントンの羽を持って出ていった。見たことない人だけど、タソガレドキの忍の服を来てたな。
まあ、まだ入ってきてないからいいか。
「くせ者っ!」
立花仙蔵くんが殺気立って塀を乗り越える。考えるより、体が反応した。
「出門表にサインっ!しないと、地獄の底まで追いかけますよぉ〜っ!」
「に、逃がしちゃったじゃないかぁ!」
どんな理由があってもサインをせずに出入りは許さない。マニュアルは大事だ。彼が学園に戻るのを確認して、僕も戻る。何か考え込こんでいるが、ほっておこう。
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