忍恋

□6.くノ一な彼女 の段
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「新野先生には?」

「それが、今日はまだいらっしゃらなくて。」

「では、明日、新野先生に聞いてからにしましょう。」

「だ、ダメよ!」

「えっ?」

「…いいわ、一人で行くから。もともとそのつもり、だったし。」

「わ、ちょ、ちょっと!」


彼女はやっとという感じで立ち上がると、痛みに顔を歪めた。今にも倒れそうになりながら一歩を踏み出したところで、やっぱり倒れる。


「ご、ごめんね。」

「いえ…。立ち上がれますか?」


倒れてくるだろうと思っていた方向とは違う方に倒れてしまった為、反応が遅れてしまった。間一髪、彼女を抱き締めるように下敷きになる。彼女の顔が首筋に埋まり、息がこそばゆい。こんな美人に押し倒されているなんて、役得だな、なんて呑気思っていた。


「うっ、あの、無理みたい。」

「…やっぱり、まだ歩くなんて無茶ですよ。」


少しの名残惜しさを感じながら、抱き起こそうと彼女の背中から足に手を移動させる。「んっ」と色っぽい声が首筋に埋まる彼女から聞こえるものだから、急に意識してしまい顔が熱くなるのを感じた。その時だった。



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