ゆめへ…short

□ついてない日は の段
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今日はいつにもましてついてない。


まだ昼前だというのに、もう三回も綾部くんの落とし穴に落ちたし、やっと仕上げた委員会のプリントは小松田さんのミスで水浸しになり、新野先生が出張と言うことで代わりとして医務室に向かう途中、一年は組の手裏剣の授業に出くわし腕に傷を負った。

さすがの僕でも、こんなについてない日はなかなかない…。


「あーっ、もう、なんで利き手側に当たるかなあ…。」


今日はいつにもまして寒い。さっき、ここに来るときに見た空はどんよりと重く、雪でも降りだしそうだな、と思った。

そんなことを考えながら、医務室で腕に包帯を巻いているとすっと人が入ってきた。


「こんにちは、新野先生…」


彼女はそこまで言うと僕が包帯を上手く巻けていないのを見つけた。こんなに格好悪いところを見られるなんて、やっぱり、今日はついてない。
彼女は半年くらい前、山田先生の紹介で事務で働きだした名無しさんさん。利吉さんの幼馴染みらしい。学園に入る矢否やあっという間にアイドル的存在となった。

その、名無しさんさんとせっかく二人きりだというのに…。

「新野先生は出張でして、授業中以外は僕が代わりをしているんです。あっ、これは、さっき運悪くきり丸の手裏剣があたってしまって…利き手側に当たったから…。」


恥ずかしくて最後の方は小さい声になってしまった。そこまで言うと彼女はにっこり笑い「今日も大変だね。」と隣に腰かけると、優しく巻きかけの包帯を僕の手から取り綺麗に巻き直してくれる。
その距離感がいやに近くて自分でも顔が赤くなっていくのが分かる。何だか変な気分になってしまいそうだ。

ほんのり火照った頬に熱っぽく潤んだ瞳、少し開いた赤くてぷっくりと柔らかそうな唇から震えたような…息づかい…?


「名無しさんさん!もしかして熱があるんじゃないんですかっ!?」

「そう…みたいなの…。よし、出来た。」


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