ゆめへ…short

□大人になりたい の段
1ページ/6ページ



今日は久しぶりの休みだ。補習もないし、朝から快晴。アルバイト日和だ。

「よぉ〜っし!かせぐぞぉ〜っ!」


いくら晴れていたって、真冬。

凍てつくような、それでいて清々しい寒さに一つ思い切り伸びをすると、意気込んで出かける準備をする。
土井先生に外出届けを書いてもらい、小松田さんに渡すと、辺り一面の霜柱を蹴って猛だっしゅで町まで掛けた。

朝から頑張った甲斐があり、今日はかなり順調だ。よし、子守りは忍術学園に帰って土井先生に頼もう。

洗濯や売り子などの一通りのアルバイトをこなした時はもう昼前になっていた。赤ん坊を背中であやしながら、内職を片手に忍術学園に帰っていると見知った顔が二つうどん屋に入っていった。


「土井先生、と…名無しさんさん?」


なぜか、二人を見て隠れてしまった。

そういえば、外出届けをもらうとき休みの日だというのに土井先生はもう起きていた。いやに早起きだなと思ったが、出掛ける用事があったのか。

最近、この二人はよく一緒にいるな。
そう思うと、チクッと胸が痛んだ。

自分の想い人が他の男といるだけでも気にくわないのに、よりによって土井先生なんて…。

追いかけて入ろうか迷ったが、やめた。

上級生と変わらないくらいに見えるのに、自分と8つも年が離れているんだから行ったところでおじゃまむしだ。上級生だって狙ってるし、利吉さんも名無しさんさんが忍術学園にきてからあからさまに来る頻度が増した。

「ちぇっ。今日はあいつらと遊んでりゃよかったな。」

小銭の入った小さな巾着を握りしめ、忍術学園まで重い足取りで帰った。




−−−−−−−−
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ