ゆめへ…short
□二度目の初恋 の段
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「わ、私がいるときは助けてやれるけれど、もう少し、ですね。落ち着いて……。」
それを誤魔化すように、私が説教モードに入ると急に名無しさんさんの顔が曇る。
何か不味いこと言ったかな…?
グイッ
「っ!ど、どうした?」
私の首に手を回したかと思うと引き寄せられた。
いきなりのことで、抵抗も出来ずもう目と鼻の先には名無しさんさんの少し寂しそうな顔が。
絡む視線が離せなくなって、鼓動が早くなる。
「…偶然じゃないですよ?」
「それって、どういう…。」
彼女が目を閉じる。えっ?こ、これは!
ま、待て待て待て!
どうみても彼女は15そこそこだ。六年生と変わらない!
怪しく濡れる睫毛に、赤く染まった頬に、少し開いた柔らかそうな唇に、ごくりと喉がなる。
ダメだ、と理性が警鐘を鳴らす。
「えへへ。嘘ですよ。」
「!」
名無しさんさんの瞳がパチッと開く。申し訳なさそうな表情で「困らせて、ごめんなさい。」と呟くと彼女は私を解放した。
か、からかわれたのか…。
ホッとしたような、残念なような。
自分がこんなにも脆いだなんて、情けなくなる。
「はぁ。いや、いいんだ。」
怒ってはいないんだけど、なんとも納めどころのない気持ちにため息がでる。
「あのーいい感じのとこ悪いんですが。こっちがもう見てらんないんすけど。」
いつの間にか隣に来ていたきり丸に言われて、まだ名無しさんさんを抱いていたことに気がつく。
慌てて下ろすと気を付けるように彼女に注意して逃げるようにその場を立ち去る。
去り際に冷めた目をしたきり丸に「そんなんじゃ、他の奴に取られるのが落ちっすよ」なんて言われた。
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