ゆめへ…short
□風邪の日 の段
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「う…ん。」
寝ていると額にヒヤリとした感触があった。冷たくて気持ちがいい。誰かかが手拭いを置いてくれたようだ。俺はどのくらい、寝ていたんだろう?
「あっ、起きた?何か食べれる?」
伊作の声だ。まだ目を開けれず気配を探る。彼女は…いないようだ。
「そうだな…粥か何か…。げほっ、げほっ。」
「わっ、本当に大丈夫?雑炊でいい?」
「ああ。頼む。…名無しさんは?」
「…名無しさんさん?それなら、利吉さんが来てるから行っちゃったよ。すぐ雑炊持ってくるね。」
「ああ。」
利吉さんが来ているのか。彼女は、やはり彼を思っているんだろうか…。俺や仙蔵、伊作は彼女にとって利吉さんがいないときの寂しさを紛らわすだけの存在なんだろうか。
体が弱っているときは、考えが悪い方に向かってしまうというのは本当だな。結構、熱が高いみたいだ。朦朧とする意識の中でそんな事をぼんやり思っていたら、伊作が戻ってくる。
「留三郎、これ食べてみてっ!」
「ん、ああ。悪いな、伊作。」
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