ゆめへ…short

□風邪の日 の段
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「何よ、ニヤニヤしちゃって!食べなくていーわよっ!」

「いや、でも、文次郎あたりなら、貰ってくれるかもしれないな。いつも、味の濃淡を問わず…とか何とか言ってるからな。」

「と、留三郎〜っ。ダメじゃないかっ!名無しさんさんわざわざ裏裏山まで鳥を狩りに行ってくれたんだよっ!」

「普通、鳥の出汁がでて、美味しくなってもおかしくないんだけどな。これも才能だな。」

「〜っ!もぉーいいっ!留三郎なんて、風邪でずっと寝込んじゃえっ!」


うわーんとわざとらしく伊作に泣きつくと、伊作は困ったようによしよしと彼女を慰めている。


「まだ、これは残ってるのか?」

「わかったわよっ!処分しとくわよっ!」

「いや、後で食べる。置いておけ。」

「な、なんなのよ…っ!あっ。」

「!りょーかい、またお腹空いたら言って僕持ってくるから。」

「ああ。伊作、頼む。」


彼女は空になった器を見つめる。伊作は満足げに彼女に「よかったね。」と笑いかける。少し顔を赤くした彼女は上目遣いで俺を見上げ少し口を尖らせて「明日はもっと上手に作る。」と言った。




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