ゆめへ…short

□うたた寝 の段
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「……またか。」


図書室に行くと、何時ものようにいつもの場所で気持ち良さそうに彼女が横を向いてうつ伏せて寝ている。寒くもなく、暑くもなく、一年で一番、清々しい季節。窓からは柔らかい光が降り注ぎ彼女の寝顔に格子状の影を落とす。読み掛けの本は風に吹かれ頁が捲り、起きたときにはどこまで読んだか分からなくて困り顔をするんだろう。それもいつものこと。

私よりも二つ上の彼女はここの卒業生でフリーのくノ一だ。在学中からよく、ここへ来ては授業をサボっていたから、みんな彼女がここへ来るのは静かでよく寝られるからだと思っている。

私も何時ものように彼女が寝ている、その斜め前の何時もの場所で持った来た読み掛けの本を開く。

低学年の騒ぐ声が遠くの方で聞こえる以外、静かなもので頁を捲る音だけがやけに響く。まあ、確かに寝るには心地よいだろうな…。





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