ゆめへ…short

□うたた寝 の段
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「……名無しさん。」


いつの間にか、視線は本から彼女へ。声をかけても起きる気配はない。いつもとは違い絵の多い本がパラパラと更に頁を進める。
無防備な寝顔に、さらりと細く繊細な前髪が耳から滑り落ちる。起きてしまうだろうか、と思いながらそっと指で救い上げもう一度耳に掛けると、長いまつげが僅かに揺れる。


「ん…ちょ、じくん。」


まだ目を開けずに寝言のように名を呼ぶので、返事をした方がいいのか迷っているとほんの少し彼女の瞼が持ち上げられる。


「……どうした?」

「やっぱり。長次くんだった。」


彼女はふんわりと微笑むとこちらを見ることなくまた瞳を閉じる。卒業してからも忍務をこなしながら、三日と開けずにここへ通っていたのに、今日は三週間ぶりだった。




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