ゆめへ…short
□運命論 の段
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「名無しさん。おいで。」
屋根の上で暖かい日差しの中、うとうとしていた私を呼ぶ声がする。まだ、眠たい目を擦りながらチラリとその人を確認して返事はするけれど犬でもあるまいし、そんな簡単に尻尾振って行かないわよ。
「名無しさんってば。本当に君は気まぐれだな。」
放っておいても貴方が来ることを知っているから、行かないのよ。隣へやって来た半助は愛しそうに私を抱き寄せる。ねえ、気づいてる?私がこうやって大人しく抱かれるのは半助、貴方にだけなのよ。
半助は鼻に、頬に口付けて最後に私の首筋に顔を埋める。子どものような扱いはやめてよね。確かに童顔ではあるけれど、私は淑女なのよ。気に食わなくて、手で顔を押し退ける。
「名無しさん今日はご機嫌ななめ?」
不安そうに私の機嫌を伺うのはまあ、合格かしら。あんまりにもその顔が可愛そうだったから、甘い声ですり寄ればすぐに幸せそうにまた腕の中に閉じ込めてごろんと寝転ぶ。少し苦しくて、たくさん幸せ。彼からは私の大好きなお日様の香りがするから。
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