ゆめへ…short
□甘い罠 の段
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「う…ん…。雑渡さ………。」
「うん?」
「…雑渡さん…もう…大丈夫、ですか…?」
「うん、あの薬、使う前に強力だって一度説明した方がいいと思うよ。こんな時間まで無断外出なんて…お陰で陣内にまた怒られるよ。」
「…そ、ですか。よか…雑渡さん!?起きたんですかっ!?」
甘えるように私の上で受け答えをしていた彼女がいきなりガバッと起き上がる。夢現で返事してたのか…器用な子だな。
それでも、その必死な様子につい目元が細くなる。
「どうやら、二刻は寝たようだ。そろそろ私はおいとまするよ。」
「えっ…。もう、お帰りですか?まだ、無理をしては…。」
帰ろうと衣を調えだすと、しょんぼり頭を下げて控えめにけれどしっかりとぎゅっと袖を掴む。
「そんな寂しそうな顔して。名無しさん、君、本当に私の事が心配で引きとめてるの?」
「…半分。もう半分は…分かって下さい。」
「…。」
本当にかわいいな。連れて帰ろうかな。
拗ねたようにそう言う彼女の頭をぽんぽんと軽く撫でて裾を掴む手を解くと
彼女は諦めたように短く息をついた。
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