ゆめへ…short
□初雪の願い の段
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「滝ちゃんっ。」
「……。」
今にも雨か雪でも降りそうなどんよりと重い、低めの空とは対照的な、いつもの、雲一つない青空のように澄んだ明るい声が私を呼んだ。
「たーきちゃんってば!」
「そんな大きな声を出さなくても聞こえてますよ。」
「なら、返事くらいしてよ。連れないなあ。」
裏山で鍛練をしてる私が見える岩の上に座ると何をするでもなくじいっと見つめる。彼女は私と一回り以上も違う……七松先輩の母だ。初めて会ったのはもう、二年前。委員会活動中に後輩として紹介された。先輩と良く似た笑顔に無邪気さを感じるような雰囲気の母君で。一年だった次屋に止められるまで、私の自慢話をどこか嬉しそうに聞いていたのが印象的だった。
正直、私はこの人が苦手だ。
「ねえ、お話ししてよ。」
「変わった方ですね。何度も同じ話ばかりつまらないでしょうに。」
「最近、そればかりね。」
彼女は「聞きたかったのにな、」と視線を落とした。半刻経っても冷たいだろう石の上でただ私を見詰める。
「私の自慢話を聞きたがるのは貴方くらいなものですよ。」
「そうなの?キラキラしててかっこいいし、私は好きだけどなあ。」
そういえば、前に「何故、私の話を最後まで聞くのか。」と聞いたときも同じ事を言ったな。こういうことを言う人は初めてで、戸惑いの方が強かった事を覚えている。
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