ゆめへ…short
□初雪の願い の段
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「もう、帰った方がいいですよ。きっと、雪が降ります。」
「そうだね。」
肯定はするものの、彼女はそこから動こうとはしない。
「こんな地味なとこ見ていても面白くもないでしょう?」
「そんなことないよ。完璧であるための努力が出来るのってすごいなって思うし、尊敬してるから見てて私も滝ちゃん見習わなきゃなって勉強になる。」
「……そうですか。でも、見られていると気が散るんです。」
嘘だった。
こうでも言わないとこの寒空の下であなたは何時までも体を冷やし続けてしまいそうで。
「……滝ちゃんは優しいねぇ。でも、寒くなんてないから大丈夫だよ。」
それなのに、貴方は見透かしてしまうから。
「知りませんよ、風邪引いても。」
「うん。」
「……。」
何時もなら、本当なら。
中断して彼女を学園まで連れ帰るところだけれど、今日はどうしても傍にいて欲しくはなくて。諦めて立ち去るまで放っておこうと知らぬ顔をした。
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