ゆめへ…short
□星に願いを。
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「七夕の願い事、何書いた?」
日が落ち暗くなると昼間の蒸すような暑さが嘘のように、過ごしやすく。何かにつけ集まっては酒を煽る彼らを部屋に残し、一人縁に座り夜空を仰ぐ。本当に願い事が叶うんじゃないかとさえ思えるような満点の星が瞬くから、と言うわけでもないけれど。背後に伊作の気配を感じ、それは自然に言葉になっていた。
「願い事?酔ったの?」
私の質問に伊作は不思議そうな声で。隣へ座り持ってきた、湯呑みを私に差し出し「はい、水。珍しいね。」と微笑む。
「年に、一度かあ……卒業したら私たちはそんなに会えるのかなあ。」
それを受け取り、視線は伊作から再び夜空へ。ぼんやりと抱いていた言い知れぬ寂しさ。
口にできたのは彼だったからだと、素直に思う。
「本当に珍しいな。」
伊作は心配したような声色で、視線が伺うようにこちらへ向けられたのを感じた。
部屋からは賑やかな声が。酒宴はまだ終わりそうもない。受け取った水を喉へ流し込むと、それは、酒で火照った体に心地よく感じた。
「……思ってたより、呑んだのかな。」
縁においた手に優しく伊作の手が重ねられ、ずっと変わらない温もりが何故だか無性に心細くなる。いつもなら、本当なら。学年も委員会も同じだからか、彼とは気がつくといつも一緒で。私の思い出にはいつも彼がいて。どんなに苦しいときも、彼が隣で笑ってくれるから、心強くなれたのに。
来年の今頃はみんなは……
彼は、もう隣にいないんだろうか。
「!名無しさんちゃん、泣いて」
「あ!昼に乱太郎たちに用意した短冊残ってる?私も書いてみようかな。伊作も書く?持ってくるよ!」
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