ゆめへ…short
□星に願いを。
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気がつかれないように拭ったつもりが、伊作には分かったしまったようで。折角、楽しく呑んでいたのに水を差してしまった気がして、慌てて取り繕う。重ねられた手をほどき立ち上がろうとして、
「そんなの書いたって意味ないよ。」
不意に捕まれる。
驚きで彼を見るとその顔はいつになく真剣で。
「え?」
目が逸らせなくなって。
「……僕の願い事は名無しさんちゃんにしか叶えられないんだから。」
「それって、どういう……っ。」
私が最後まで言いきる前に引き寄せられてその腕の中に納められる。耳元で「知りたい?」と言った伊作の声は僅かに震えていた。ぎゅうと覚悟を決めたように一度強く抱き締められ。
少し、離されて。
また、徐々に縮む距離。
まるで、空間が切り取られたみたいに。今までうるさいくらいに聞こえていたみんなの騒ぐ声もどこか遠くて、聞こえるのは高鳴る自分の心音だけだった。
「名無しさん。」
小さく何かを確かめるように名前を呼ばれて。逃げようと思えばいくらでもそうできるのに。
何故だか拒めない。拒みたくない。
急な展開に動揺しながらも、応じるように私は瞳を閉じた。その瞬間。
「あーーーっ!伊作と名無しさんが、ちゅーしてるぞーーーっ!」
「なにぃー!?伊作が抜け駆けだとぉお!!?」
「なにぃー!?伊作ぅ!勝負だぁ!!」
触れあう寸前。
もう、この目の前の状況でいっぱいいっぱいだった私は小平太の気配には気がつかず。
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