伝えたいから伝わらない の段

□伝えたいから伝わらない の段 五
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「「「名無しさんさん!」」」



一年は組が声を揃えて嬉しそうに叫ぶ。
彼女は僕たちを見ると、物凄く動揺していた。


「小松田、くん。みんな、なんで…。」

「僕、言ったでしょう?タソガレドキに戻ったら、連れ戻しに行くって。」


僕は名無しさんさんがボロボロの薄い布一枚で善法寺くんに抱き抱えられているのを見ると慌てて上を脱ぎ彼女にそれを着せた。
善法寺くんから彼女を受けとると、その温もりに帰ってきたんだと安心した。


「名無しさんさん。帰りましょお。」


そう言うと、名無しさんさんは僕の肩衣にしがみついて泣いた。いつかと同じだ。
普段はあんなにしっかりしているのに、こんなにも弱い。

僕が守ってあげるんだ、と強く思った。






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