07/07の日記
16:25
七夕ですね。
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お久しぶりです。
なんやかんやと色々ありますが、とりあえず、用意していた短編があったのでアップ致しました。テーマは「七夕」です。皆さんは何か願い事を書いたでしょうか。
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願い事。(仙蔵ver.)
「七夕の願い事何書いた?」
文机に向かい何か書き物をする、その垂直に交わる壁に背を預け私は医学の本を読む。今日は彼の髪が乱れない程度に風もあり幾分かは涼しく感じはするけれど。半刻もこうしていると、流石に少し退屈もあって。ふと、目に入った彼らしくもない物を見つけ、兵太夫や伝七用だろうと分かっていながらついつい聞いてしまった。
「それは、下級生ようだ。」
「まあ、そうだとは思ったけど。仙蔵は短冊に何も書かないの?」
「願いを他者に任せてどうする。それとも、その紙切れは人の心まで動かせるものなのか?」
この返事も想定内。此方には一瞥もくれず、相変わらず何か思案しては筆を走らせる、を繰り返す。……まあ、ここまで彼が熱中するのだから火薬の調合とかだろう事くらいは分かっているのだけれど。
それが、面白くない。
「何?まさか、恋愛の願い事?」
少しでも気を引きたかったのに、もう返事すらない。しかし、ここで食い下がってもいいことはないだろう。仕方なくまたいつ終わるとも分からないそれが終わるのを待つために、文字の続きを追うことにした。
「……だとしたら。仮に書いたとして、私の願い、叶えてくれるのか?」
ページを2、3捲って、急に彼の筆が不自然にピタリと止まる。その言葉は含みを帯びて、真意を探るべく視線を本から彼に向けると見計らったように筆を置き、顔をこちらへ向けた。目を細目、にこりと笑うその表情は何か企んでいるときの顔で。
「……っ」
私が意味を理解し、言葉を発するよりも先に、さほどなかった距離は床に片手をついて簡単に詰められ、もう片方の手で逃げ道を塞がれる。
それは、つまり。
私にしか叶えられないということ。
「どうする?叶えてくれるのか?」
分かっている癖に。何時間も、いつ終わるかも終わるか分からないのを待っていた意味を。わざとらしい、そう思うのに。鼓動は素直に高鳴り、期待する。
唇は触れそうで触れない。
fin.
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