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□風邪を引いたときは……
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「ありがとう。……これ、伊織くんが?」

そこにあったのは、お粥だった。

「ああ。食べられそうか?」
「うん。……おいしい。」
「そうか。奈菜の口に合ってよかった。」



「ごちそうさま」

あまり食欲がなかったけれど、お椀一杯分食べられた。
お粥と一緒に持ってきてくれた風邪薬を飲み、冷えピタを貼り、新しいアイスノンに頭を乗せた。
横になるときも伊織くんが背中に手を当てて、手伝ってくれた。

「……伊織くん。一つだけお願い聞いてくれる?」
「ああ。なんだ?」

頭を撫でながら、優しく聞いてくる。

「私が眠るまで、手……握っててくれる?」

熱のせいで、いつもより目をうるうるさせながら、伊織くんを見る。

「……っ。わかった。」


伊織くんの大きな手が、私の右手を優しく包み込んでくれた。
その事に安心しながら、目を閉じた。

「早く治して俺に元気な姿を見せてくれ。奈菜。」

完全に眠りにつく前にそう聞こえた気がした。




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