BOOK2

□ぽちっとな
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「オンニー、まだー ?」

「んー」


広いベッドの端に座り、オンニの小さな身体を後ろから抱きしめて三十分が経過した。
華奢な肩に顎を乗せて構ってアピールするけれど、
適当な返事しかしてくれない。

さっきからピコピコピコピコと、そんなにゲームが楽しいですか。
せっくホテルで一緒の部屋になれたんだし、
そろそろ私の相手をしてくれてもいいんじゃないですかね?

そんな気持ちをこめてお腹に回した腕に力を込めると、
邪魔だよなんて酷い言葉が飛んできた。


「あっ、ほらー、ユナが邪魔するから失敗したじゃん!」


プンプンしながら私の腕を叩く5歳児、
じゃなくてキム・テヨン氏。
いやいやお姉さん、恋人よりゲームが大事なの?
私はいちゃこらしたくてずーっと待ってるんだよ
怒りたいのはこっちだっての。


「はいはい、ゲームはもう終わり!」


そう言って憎いゲーム機に手を伸ばすと、手の甲をぺちりと叩かれた。


「もうちょっとで終わるから」


さっきからそればっかり。
再びピコピコと規則的な音が部屋に響く。


「ねえオンニ、これってそんなに面白いもんなの?」


「面白いよ!ユナもやってみる?」


振り向いたオンニの目は子供のようにキラキラしていて、あまりの可愛さに思わず頷いてしまった。
あんまりこういうの得意じゃないんだけどな。

軽く説明を受け、言われた通り落ちてくる星をタップするも5秒でゲームオーバー。
何これ、人間が反応できる速度じゃないんですけど。


「オンニ、こんなプロレベルの設定、初心者には無理だよ」


「ごめんごめん。これなら簡単だよ?」


先程よりもゆっくりなステージに再チャレンジしたけれどクリアならず。


「ユナの下手くそー」


そう言ってケラケラ笑うオンニにむっとする。
仕方ないじゃん、初めてなんだもん。

あ、良いこと思いついた。


「オンニ、もう一回このステージやってクリアできたらキスしてよ」


「へっ?」


唐突な私の提案に、オンニが真っ赤になって俯く。
キスだけでこんなに照れるなんて、ホント可愛いんだから。


「何ならさっきより難しくしていいよ」


「んー、それならいいよ」


私の案にあっさり乗ったオンニは、余裕顔でステージを選んでる。
ふふ、どうせ無理だろうと思ってるんでしょう?
私を誰だと思ってるの?
少女時代のセンターイム・ユナだよ?
私の集中力、舐めないでよね。


「じゃあ、はいこれ。中級者向けだから絶対に無理だと思う、よ、って、え?」


ゲームが始まった瞬間、さっきとは別人のような速さで動く私の指。
びっくりして固まるオンニをよそに、一際輝く星をタップすると、
ステージクリアの音楽が高らかと鳴り響いた。
よし楽勝!


「ユナずるい!さっき手抜きしたでしょ!」


「手抜きじゃないよ。本気度のちがいですー」


「ちょ、ちょっと待って」


「待てませーん」


慌てて逃げようとするオンニを抱きしめたまま後ろに倒れ込む。
つられてひっくり返ったオンニの身体を反転させ、腰をがっちり固定した。


「さあオンニ、あつーいキスをしてもらいましょうか」


私に覆いかぶさる形になったオンニに唇を突き出すと、
顔をぷいっと逸らされた。
赤くなった耳たぶが可愛らしい。


「オンニ、約束守ってよ」


「うぅ…」


頑なに私を見ようとしないオンニの顎をぐいっと引き、
閉じたままの唇を人差し指でそっとなぞる。
ゆるゆると指を左右に往復させると、
くすぐったがりのオンニは口を薄く開き身体をぶるっと震わせた。


「ねー、早くー」


「…」


「これならどうだ!」


いつまでもぐずぐすしているオンニのTシャツの中に手を入れて、
すべすべの背中を撫でる。
指先で背骨を下から上につーっとなぞると、
オンニは白い首を反らして小さく喘いだ。
下からのアングルだとエロさ倍増だ。


「オンニ、早くしてくれないと襲うよ?」


ブラのフックに手をかけ低めの声でそう言うと、
オンニはしばらく逡巡した後、ゆっくりと唇を寄せてきた。


「キスしたら、襲わない?」


「うん」


とびきりの笑顔で頷くと、ほっとしたようなため息とともに、
柔らかな感触が下りてきた。



触れるだけかと思っていた口付は、
思っていたよりずっと深くて情熱的だった。
普段はオンニからキスなんてめったにしてもらえないから、とんでもなく興奮する
私の興奮が伝わったのか、
なんとオンニの方から舌を絡めてきた。


「っん…」


予想外の出来事に、自分でもびっくりするくらい甘い声が漏れる。
反射的に引っ込めようとした私の舌は、
追いかけてきたオンニの舌にあっさりと捕まった。
くちゅりと音がするほど舌を何度も吸われて、
口の端からまた恥ずかしい声が漏れる。


「ふっ…んぅ」


「ユナ、可愛い」


唇を離して大人っぽく微笑むオンニ。
さっきまで子供みたいな顔してゲームしてたくせに…。

翻弄されたのが悔しくて、今度は私から口付けた。
頭を強く抱き寄せ、唇を重ねたままオンニを組み敷く。
軽く抵抗されたので、邪魔な両腕を片手で頭上に押さえつけた。

空いた手を服の中に侵入させてブラを上にずらす。
焦ったオンニが必死で身体を捩るけど、その動きは却って私を煽る結果になった。


「オンニ、可愛い」


「ちょっとユナ、キスしたら襲わないって言ったじゃん!」


「えー、そんなこと言ったっけ?」


惚けて胸を揉みしだくと、徐々に抵抗が弱まってきた。


「う、ぁ…ユナの、嘘つ、き」


涙目で睨みつけてくるオンニには悪いけど、
そんな潤んだ瞳で睨まれても可愛いだけだよ。


膨れてきた突起を指でちょんと押し、耳元でそっと囁く。


「私は星より、こっちの方が好きだな」


「バカ…」


返ってきた声の響きは、限りなく「好き」の響きに似ていた。
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