Novel
□六通りのこころ
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put up with 我慢する おそ松
いつもそうだった。
俺は「兄」だから。
けれど、俺は不思議に思う。
だってたった数分の差だろ?
兄と言っても六つ子、ほとんど同じようなものなのだから。
だけど悲しいかな、それでも俺は兄だった。
彼らの先頭に立つのも、彼らを守るのも、彼らに譲るのも、俺だった。
だって、俺は一番の兄貴だから。
そういう風に育てられたからなのか、そういう風に慕われたからなのか。
俺は皆のリーダーで、基準で。
そうして、最後のストッパーなのだ。
自覚は諦めと同義だった。
「なあ、カラ松。どうして俺は兄ちゃんなんだろうな」
いつか、そんなことをすぐ下の弟に零したことがある。
ほとんど無意識だった。
おそらく、明確な答えを求めた訳でもなかった。
ただ、それを聞いた彼は一瞬目をぱちくりとさせたあと、ふっと笑ったのだ。
いつもの格好つけた笑い方じゃなくて、彼本来のへにゃりとした笑い方だった。
「そんなの、決まってる。おそ松兄さんがおそ松兄さんだからだ」
その言葉はあまりにも自然で。
間違いなく非論理的であるのに、理由になっていないのに、俺はそれをなるほど、なんて納得してしまったのだった。