アネモネ

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"あ、神谷様..."


神谷と呼ばれたこと男、神谷財閥の奴か。

神「待ってたよ〜、相変わらず美しいねぇ」

幼い頃のまんまだ、と彼女の手を強引に取りキスをする。


立「......」


おおっと、タチは面白くなさそうだな、ま、俺も面白くないけど。


神「それでぇ? 君たちが新しく就いた執事くん達って訳ね」


なるほどなるほど、と上から下まで眺めてくる。

"こちらが神谷浩史様です"


挨拶をしない俺らを見てなまえ様がすかさず紹介してくれる。


この男といえばずっと笑ってる...なんだこいつ...


お互いに立花、福山と名乗りお辞儀をする。


神「じゃあ、挨拶も済んだことだし行こっか」


手を取り腰を取り、強引に引き寄せ自分の屋敷へ連れ込むこの男、いけ好かねぇ

なまえ様といえば困った表情のまま連れていかれてしまった...


立「俺、ああいう奴嫌いだ」

福「偶然だな、俺もだ」

イライラした状態でなまえ様を追いかける。


俺らの屋敷よりは少しばかり小さいが、流石豪邸。 立派な建物だ。


神「そういえば、旦那様は元気かい?、こっちに帰ってくる時があったら是非ともお茶したいね。家の当主として」

"........."


にっこりと笑って沈黙の返事をし続けるお嬢、そんなお嬢の事は気にせず。べらべらとしゃべり続ける。


神「さぁここだよ。みんな君の事を首を長くして待っているんだ。」


大きな扉の前に立つ。 奴の言葉で少しばかり後ずさりするが意を決したように前に進む。


安「やぁやぁ、待っていたよ。」

梶「随分と遅かったじゃないか。」

ボ「やっとこのむさ苦しい空気が和らぐねぇ」


貴族様たちはこの神谷という男を含めて皆、個性派ぞろいだ。

まぁ、ボッチャ様は随分と鍛えられているようで、着ているチャイナ服が少しキツそうにも見える。


「......」

立「遅くなってしまって申し訳ございません。
この度 なまえ様の執事として参りました。立花と福山、そしてあとから来るのはリーダーの小野です。」


すっと前へ一歩出て挨拶をする立花。相変わらずシャキッとしてるな、
だが、そのお陰でなまえは少し俺らに隠れる様に立てるはずだ。

横目で見ると俺達のことを交互に見た後少し安堵していた。


神「ね?、頼もしい子達だろ?
さぁ、そんなところに突っ立ってないで、楽しくお茶会でもしようよ」


なまえちゃんの席はこっちだよーっと椅子を叩く神谷。
ほかの貴族達はべらべらとお嬢を見ては何やら呟いていた。


俺は手を取り なまえ様のペースに合わせて椅子まで連れていく、
タチは椅子を引いてから、横に立ち仕事の報告書を広げていた。


「チッ、使用人と聞いていたがまさか執事とは...」


ふと聞こえたその言葉 一体誰が言ったのか。
周りを見てもただ会話を楽しんでる貴族しかいない。気のせいか...?





報告会も順調に進み、終盤に差し掛かった頃、不意に裾を引っ張られる。

なまえ様だ。何やら貴族達を見て怯えてしまっている。


目線の先には煙草を吹かしてる 神谷様がひとり、そうか、煙草は嫌いなんだなうちのお嬢。


福「お嬢、辛いなら席を外しますか?」


報告会もそろそろ終盤だし、とタチにも目で合図を送る、タチもその方がいいと頷くが、
俺の前にすっとメモがわたされた。


"大丈夫です..."


その言葉とは裏腹に顔は先程より真っ青になって、呼吸も浅い。しかし頑なにこの席を動かないようだ。


相変わらず仕事になると頑固になるな...と、小さく息をついて裾を掴んでいるなまえ様の手を握りしめた。


なまえ様は驚いていたが、少しばかり落ち着いているようだ。








それを面白くない様な顔で見ている人がいる事に俺やましてやタチすら気づかなかった。





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