■マ王■

□シブヤ
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こちらの時間で2週間が過ぎた。シブヤの成長は早く、毎日顔を見にきていたグレタに預けてしまっても良さそうだ。
「ヴォルフラム シブヤかわいいね。」
「ああ、でも僕もさすがに仕事が溜まってきたから、この子をお願いしていいかな?」
「うん 任せて。あのねドリアも前に子猫を育てたことあるんだって。」
「そっか、じゃあドリアに聞きながら面倒見てくれたらいい。」
シブヤを両脇から抱き上げて目の前にする。
「シブヤ グレタとドリアのいうことをよく聞くんだぞ。」
めー
ペロリと僕の鼻を舐めた。
チリンとひとつ鳴らしてグレタに抱かれて僕の部屋から出て行った。
ユーリもあのシブヤみたいに素直だといいのに。


僕もざっと部屋を整頓して廊下を歩いていくと、ユーリ専用の風呂から水音がした。
ふう。帰ってこれたー。
エコーする声が聞こえてつい緩みそうな頬の筋肉に叱咤する。
「遅いぞへなちょこめ。二週間も国を開ける王がいるか!」
「二週間?よかった。おれはてっきり季節が変わってしまったかと思ってたよ。」
「さっさと出て支度しろ、兄上も視察に出かけていてかなり書類が溜まっているんだぞ。」
「えー、やっとテスト勉強終わったのにまた缶詰ですか。ちょっと肩凝っているからもう少し浸かっていてもいい?」
「仕方ないなー。僕が背中を流してやろう。」
「いや、身体は地球の風呂屋で洗ってきたから。」

腰にタオルを巻いて もう一つのタオルで髪を拭きながら自分の寝室に入ってきたユーリに声をかける。
「でも、眞王廟じゃなくて直接こっちに来たんだな。」
「いや、一旦 眞王廟の噴水に出たんだけど、村田も連れてきてるから。眞王廟の噴水からこちらにもう一度スタツアしたんだ。俺一人だとこれでいいよな。」
「コンラートが迎えに行きたがってたのに。」
「あはは、なんかさ ヴォルフの顔が見たいなーって思ったら無意識に眞王廟かあこっちに来てしまってさ。」
引き締めていた頬がゆるんでしまった。僕に会いたいと思ってくれていたのか。
緩んだ顔を見られたくなくてベッドに座っていたユーリをうつ伏せに押し倒した。
「ヴォルフ、何すんだよ。」
「疲れているんだろう?マッサージしてやろう。」
「ああ、サンキュ」
肩の方から肩甲骨と背骨の間を僕の手のひらや指で押していく。
「ウーン最高!ヴォルフってマッサージ上手いなー。」
気持ち良さそうな表情が顎を撫でてやっていたときの子猫のシブヤみたい。
ユーリの存在が感じられてマッサージしてやることさえ僕は幸せを感じていた。
あれ?
「ユーリ寝たのか?」
向こうの勉強で疲れていたとは言ってた。気持ち良さそうに眠っているユーリを
このままにしてやりたかったが、仕事を先延ばしにしてもユーリのためにはならない。
マッサージしていた手を脇腹の方にずらした。
「ひゃあ そっそこは くすぐってー!」
「起きたか」なおも脇腹をやわやわと揉む。
「あはは、起きます!起きました。」
「今はまだ昼過ぎだ。寝るには早すぎるだろう。」
そうして着替えを渡していく。
いつもの黒い服に着替えたユーリの髪を手ぐしで整えてやる。
リボンは難しいけど、これならと用意していたものを僕のポケットから出してユーリの胸のポケットにセットする。
「お?真っ赤なハンカチ?」
「本当は赤いバラがいいんだけどそれは今度な。」
「バラなんか胸に刺してデスクワークなんでできねーよ。」
とか言いつつポケットから少し見えている赤いハンカチを指先で撫でている。
「似合うよユーリ。」
「そ?ありがとう。赤ってアドレナリン出る色なんだよね。さあ、仕事頑張るぞー。」
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