■マ王■

□シブヤ
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兄上から黒い子猫を預かった。まだ赤ん坊だ。
「しばらく国境の視察に行かなければいけなくなってしまったので頼む。」

昨日からユーリもいない。
「テストがあってさ。向こうの時間で10日は眞魔国には帰ってこれない。」
地球の十日はこっちでは何日あるんだろう。
こういう時に限って、僕の仕事が本当に少なくて手持ち無沙汰が寂しさをます。兄上の国境の視察って僕が変わることができないのかと尋ねたら
「向こうの長老が堅物で難しい人物だから、私が直接行かないとだめだ。」
と断られてしまった。

ま、いいか。
めーめー
「ん?どうした。そういえばまだ名前がなかったな。」
黒い艶やかな毛並みと、猫のくせにまん丸の黒い瞳。両後ろ足首から下だけ真っ白で靴下を履いているみたい。
「ふふっ、お前 ユーリみたいだな。」
めー
「よし、お前の名前は シブヤ だ。どうだ、魔王陛下と同じ名前だぞ。光栄だろう?」
僕の膝の上に柔らかいタオルで半身を包まれた猫が、じっと見上げてくる。顎をちょこちょこ撫でてやると気持ち良さそうだ。お返しとばかりに僕の手を舐めてくる。まだ子猫だからあんまりざらつきは感じない。
「シブヤはユーリと違って素直だな。」
そうだ、クリスマスだからって前にユーリがくれた箱に着いていた赤いリボンをチェストから引っ張り出す。金色の鈴も着いていた、これを子猫の首につけてやる。
チリン
めー
「黒に赤って似合うな。金色も似合うじゃないか。これは新しい発見だな」
シブヤのおかげで少し寂しさがまぎれる気がする。


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