■マ王■

□あなたがスターです。
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小シマロン王のサラレギー陛下から フォンビーレフェルト卿ヴォルフラム宛に一通の書簡が届いた。どうして、眞魔国の魔王陛下宛じゃないのか、疑問に思ったが、兄で摂政でもあるグエンダルが立会いのもと、ヴォルフラム自身が封を開けて中を確かめることになった。

「……なんてことだ。」
「国際平和のためだ。それに何より陛下ならヴォルフラムにこれを行うように考えるんじゃないかな。」
「兄上、そう思いますか? 僕はそうは思わない。」
「しかしお前がユーリを説得して、サラレギーのひとつ目の要求を二人で叶えないと、下手をするとちょっとした戦争になりかねない。」

「とりあえず 考えてからお返事をしたためます。」
「時間はあるからお前から陛下にちゃんと説得しなさい。不安なら私もユーリに話そう。」
「…いえ、僕が陛下に話してみます。」

サラレギーからの手紙はすごく短いものだった。
「ユーリの全身の肖像画を描いてくれたら、眞魔国と平和で親密な関係になるよう頑張るから、眞魔国一の画力と噂で婚約者の貴殿に協力してほしい。次の条件も満たしてほしい…。云々」


「また、モデルをするのか?」
「ひとは皆、憧れている人の写し絵を手元に置きたいと考えるようだ。ほら、眞王陛下や猊下の肖像画の複製はどこの美術商でも売っているだろう?」
「まあ、俺も地球の自分の部屋にはメジャーとかプロ野球選手のポスター貼りまくりだけどな。複製って 江戸時代の浮世絵のようなものか? アレって版画だから何枚も同じものを刷って増やせるって言ってたな。」
「ウキヨエ? はどういうものかは知らないけれど。眞魔国一の腕の版画職人に申し込んである。今回は昔のように写実的に描く事になる。」
何度かヴォルフラムのモデルをしたこともあるが、正直 長時間じっとするのはかなり苦手だ。こういう時地球のカメラとかビデオとかパソコンとか、あっちの文明の利器が恋しいと思う有利だが 眞魔国の王たるもの、自国の文句を頻繁に言っても虚しいだけだ。気を取り直して次の内容を促す。
「それから?」
「リクエストがあって、眞魔国の象徴でもある獅子のポーズで全裸で。」
「全裸〜!ヴォルフラムまじ?」
「僕としては全裸のユーリをモデルに絵を描くなんて夢のようなことだけど、それを複製されてばら撒かれるのは我慢できないのは確かだ。」
「俺は寒気がしてきたよ。」
「しかし、できた絵をサラレギー陛下に送れば小シマロンが眞魔国同盟に加盟してさらに他の人間の国にも加盟を進めるなどと手紙には書いてあるんだ。重ねて言うが僕は本当に嫌なんだからな。」
ヴォルラムが一人で嫌がったところで、魔王陛下は世界平和への選択をするだろうと、新魔国でも中枢の中に関わっている臣下としても、真摯に取り組もうと決意した。わがままプーだった彼も成長したものだ。
「平和のためなら俺の絵など安いものか。」
「とりあえず、簡単なデッサンからちょっと取り掛かってみよう。」

午前中で有利が関わるべき今日の大事な政務は終わっているので、ひと風呂あびてからヴォルフのデッサンに付き合うことになった。

南に大きな窓がたくさんあるサンルームに来るように言われた有利は、念のためにガウンやバスタオルなど持って向かうつもりが、荷物持ちを申し込まれてそれらを横取りされたコンラートと廊下を歩いていた。
「なんでついてくるんだよ。」
「陛下のヌードポーズをぜひ生で拝みたいと。」
「見られると思ってんの?」
「わくわくしますね。」
「ヨザックと違って俺の体が貧相なのは分かってるでしょ?」
「何を理想とするかは好みの違いですよ。俺なら陛下の方が断然…」
最後まで言わせない
「陛下って呼ぶなよ名付け親!」
「そうでした ユー 」
コンラートが決まり文句を最後まで言う前にサンルームのドアが開いて中から有利だけを引き込んでバタンとドアが閉まって、ガチャリと鍵をかけられた。
「ヴォルフラムー。バスタオルとガウンを持ってきたけれどー?」コンラートが叫ぶ
「要らない、ここにもう用意してある。 それに不必要なギャラリーがいると有利が緊張して硬くなるからここはもう構わないでくれ。」
ドアの外の気配が遠ざかっていって有利はほっと安堵の息を吐く。
「助かったよヴォルフラム。コンラッドに横で眺められるかと思うと絶対サブイボが出ると思ってたんだよね。」
「僕だってユーリの肌を他の者には晒したくない。絵ならまだしも、ユーリの本当の姿は俺だけのものにしていたいからな。しかし今回は…」
窓際にもう一人を見つけてしまった。
「なんで村田?」
「僕が猊下にもいてもらうように頼んだんだ。」
「オブザーバームラケンです〜。」
「僕はやっぱりユーリの生まれたままの姿を見て冷静に筆を進める自信がなくて、でもコンラートが横にいたら邪魔になるとおもうから今回は猊下についてもらうことにしたんだ。」
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