■マ王■

□涼を求めて 短編
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グレタがどうやら軽い熱射病になった。
花壇の雑草取りを熱心にしてくれていた。一応麦わら帽子はかぶっていたんだけど、この暑さで一斉に雑草が伸びて、本来の花がどれだかわからないほどになっていたから、夢中でやってくれていたらしい。
ギーゼラはすぐに治ると言ってたんだけどやっぱり父親としては一番そばで見てやりたい。

そいえば厨房にアニシナさんの魔道具あったな。
グレタの着替えをしてくれていたメイドさんに声をかけた。
「ドリア、厨房から チーズを粉にしちゃうぞ君 と ベリーのソースとそれから…を持ってきてくれないか?」
「わかりました。」
「それと飲み水ちょっと多い目に。」

しばらくしてドリアがカゴにお願いした品々を入れて下げてきてくれた。
「陛下、これで揃ってますか?」
「うん、ありがとう。あ、ドリアもここに居て。面白いことするからさ。」
「まあ、なんでしょう楽しみですね。」

「ユーリ なに始まるの?」
「頑張って働いてくれたグレタにとっておきの物をプレゼントするから見てろよ。」

ノックがしてヴォルフラムの声が聞こえた。
「グレタの調子はどうだ?」
「あ、ヴォルフラムー。」
「うん ご覧の通り 大分回復したみたいだけどね。まだ安静かな。」
「そうか、ちょっと安心した。グレタは僕たちの大事な娘なんだから、無茶したらダメだよ。」
「心配かけてごめんなさい。」
ヴォルフラムがグレタの傍に腰掛けて頭や頬を撫でてやっている。
なんて絵になるんだろう。

「さて、ちょうどよかったヴォルフ、ちょっと魔道具に力貸してね。」
コップに入っていた飲み水を魔力で空中に取り出した。これは兄の勝利の方が先にできるようになった。地球でやるとサイコキネシスと思われちゃうやつだ。
そこから 浮いた水の周りを魔力でふわっと覆って、その中の気圧を抜いていく。真空にしていくイメージだ。そうするとその水だけがどんどん冷えていく。

ピシ ピシ

「なあに?ユーリ。水が固まってきたよ。」
「ああ グレタ、すごいな、氷にになってきているぞ。」
「ヴォルフは炎が得意だけど、俺は今 反対に水を冷やすのを練習中なんだ。
よし、これでアニシナさんの チーズを粉にしちゃうぞくん のチーズを入れるところにこの氷を入れて…。」
たまたま偶然なのか、その魔道具って地球のおもちゃ屋さんで売っているペンギン型のアレとそっくり。前に厨房で見かけていつかやってみたかったんだよね。
「さあ、ヴォルフ 魔道具回してくれ。」どこに魔力いるのかわからないけど
道具の下にガラスでできたボウルを置く。
シャカシャカシャカ…
「ワーすごーい ユーリ! ヴォルフラムっ 雪が出てきた!」
「なに!夏というのに雪が? 本当だ。」
「本当ですね。」ドリアもびっくりしてる。
「地球では かき氷 っていうおやつなんだよね。そろそろいいかな?」
こんもりできた雪山の器を取り出す。
ベリーのシロップをたっぷりかけた。いちごに似た濃いピンク色で味も似ている。
一口味見をする。
「うん!我ながら美味い!ほらグレタどうかな?」
ひとさじ 愛娘の可愛いお口に運ぶ。
「 おーいしーい!冷た〜い」
大喜びしてくれた!可愛いなー。グレタが喜んで自分で食べている間にもう一かたまり氷を作ってヴォルフラムにも作る。今度は俺が回すところまでする。
「ユーリ お前というやつは 天才だな!」
ヴォルフが俺の容姿以外を褒めてくれるのは貴重だぞ。
「そうだろう そうだろう!」
思わずドヤ顔で決めてみた。ところが
「頭がキーンとする…。」
「あはは、一気にかき込むとそうなるんだ。グレタは平気だろ?」
「うん、グレタはさっきスゴく頭痛かったけど今はマシ。」
さっきの頭痛は熱中症だ。
「大人はキーンとするんだよね。若くないってことだ。」
実年齢80代は一瞬ムッとした。でもすぐに
「キーンとするけど夏にはいいな。」
「これに練乳を足すのも美味いんだよ。」
道具一式を持ってきてくれたドリアにも一つ作る。
「ほんとうにシンプルだけど素晴らしいですね。アニシナさんの魔導装置でもっと氷を作ればたくさん食べられるわ。早速私も作ってみます。夏に雪をいただくなんてこれほどの贅沢はありませんね。」

どうやら、グレタの症状はかなり良くなったみたいだな。
「体の中から冷やせたかな。顔色が良くなったよ。」
「うん ユーリありがとう。また、ねっちゅうしょう になったら作ってくれる?」
「熱中症じゃなくても作るから、って言うか、もう熱中症にはならないでくれ。」
「かっこいいじゃないかユーリ。」
「アニシナさんの氷であんまりたくさん食べちゃダメだよ。」
今度はお腹痛くなるからね。

新しい血盟城の名物が誕生した日でありました。

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◇あとがき◇
ただの風景描写って感じでおもしろくない?
そうかもですね。でも、氷食べたくなってくれたらいいか。
最近はレモンに練乳が好きです。
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