■マ王■

□ストレッチ
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「なあヴォルフラム、ちょっと背中押して。」
風呂上がり、上も下も短い服を着て腕や脚をすらりと投げ出したユーリに声をかけられた。
魔王の寝室のに2メートル四方のラグが敷いてある。
その中ではスリッパを脱いで裸足のユーリが座っている。

前にコンラートとやっていた ジュウナンだな。よし。
ネグリジェの僕もスリッパを脱いでユーリの後ろに回った。
背中の真ん中より少し上に両手のひらを当てて、ぐいっと押す。

「わっ 」
びっくりした。僕が押さなくてもユーリの顔がその脛に付くほど曲がる。すごい柔らかい身体なんだ。 でもマッサージがてらグイグイ背中を押してやる。
「僕が押さなくても結構柔軟じゃないか。」
「うーん、でもちょっと押してもらったほうが、自分で曲げるよりもう少し曲げられるから。ほぼ毎日これやってるよ。身体を柔らかくしておかなくちゃ、いざという時怪我するらしいから。」
「それで 初めて馬に乗って落ちた時に軽傷で済んだんだな。」
「え?」
「落馬って結構危険なんだぞ。真後ろに飛ばされる感じだから、後頭部をぶつけてしまって、身体が不自由になったり場合によっては…。」
「マジですか。」
「しかし、元々運動神経は良いのかもう結構乗れているんだろう?」
「まあ、ちょっとした駆け足ならなんとか。でもアオだけだよ。他の馬ではまだダッシュはできないな。」
乗馬の話を交わしながら背中を押してやる。

「んじゃ次はよいしょ。」
と言って投げ出した足を大きく左右に開く。股関節もかなり柔らかいんだな。
「もう一度押して。」
両足をまっすぐに左右投げ出して、また真ん中をまっすぐに上体を曲げる。
その背中をグイグイ押してやる。
「もうちょっと下の方押して。」
言われた通りに手をずらすと、腹から胸、頬にかけてがピッタリと床のラグにつく。
「うわ、本当にすごいんだなユーリ。」
漆黒の美しい髪の下に続く身体がこんなに柔軟だったなんて、新しく知るユーリの事柄が嬉しかった。

「ヴォルフも訓練でやらないのか?」
「士官学校の時代しかストレッチとかはしなかったな。」
「まあ、柔らかかったらいいんだけど いざという時大怪我するからな。ちょっと交代してヴォルフもやってみ?」
「うーん。」

ユーリが座っていた所に今度は僕が足を投げ出して座る。
薄いラグの下は木の床だというのに、ほんのりとユーリの体温が残っていて暖かい。
「じゃあゆっくり押してみるよ。 いっち、にー…」

「痛い! あゝ ちょっとユーリ!」
「ヴォルフ、硬いなー。武人さんがこんなに身体が硬いとは。」
「わ ユーリ もう押さないで!」
「これから毎日風呂上がりでストレッチしろよ。俺も手伝うからさ。」
「う うーん。」
ユーリからのお誘いはすごく魅力的だけど、すっかり身体が硬くなっていた事実は確かにショックだった。
「とりあえず背中をやりたいから立って?」
「あ?ああ。」
僕の背中にピッタリユーリの背中がひっつく。両肘をユーリの両肘に引っ掛けられた。
「なんかこの体制ユーリにピッタリひっつけられて良いな。」
「そう? んじゃ行くよ?」
ってなんだ、肘を絡められたまま ユーリが前に上体を曲げると、僕の身体が背中越しにユーリに乗っかってしまってつま先が完全に床から離れてしまう。
「わ、わ ユーリ!」
「どう?背中の筋が伸びるだろう?」
確かにちょっと気もちいいかも。
「同じようにヴォルフもしてくれる?」
今度が僕が腕を絡めたまま深いお辞儀のように上体を前に曲げる。
僕の背中にユーリの体重が乗ってくる。ユーリの軽いけどちゃんと存在感のある暖かい感触が背中全体に感じられてなんかちょっと幸せだ。
「あと5回ずつぐらいやろう。」

そうやってユーリと柔軟体操というストレッチをやって、ユーリからお願いされて触れ合うことができてちょっとした物足りなさを感じながらも幸せな眠りについた。

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◇あとがき◇
恋人同士のストレッチっていいじゃないんですか?
ヴォルユは二人の体格が近いからこそできるストレッチってありますよねきっと。

最近ストレッチとかすることないです。数年前はジムに通っていて、でももっぱらスタジオでした。ダンスっぽいのが好き。ランニングマシンは酔うし、バイクは飽きる。
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