■マ王■

□タンデム〜お忍びデート〜
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地球は夏休みだったから、帰ることなく眞魔国にもう半年いる。
俺様の働きのおかげ?でこっちの世界はすごぶる平和で、たいした魔力を使う機会もなくつまり地球に帰らなければならないこともない。
魔王業も日常的な政務を滞りなくこなしているので、今日も午前中で書類の整理は終わりそうだった。
グエンダルもギュンターも領地で休暇中だ。
血盟城では ヴォルフラムとコンラッドが俺を手伝ってくれていた。

コンラッドはダガスコスに呼ばれてたっけ?さっきから視界にいない。

「ヴォルフラム、やっぱり予定より早く終わりそうだから、昼からちょっと街に出ないか?」
「久しぶりだな、いいぞ。じゃあ変装の用意をしてくる。」
「たのんだよ」
城下の様子を見るのも大事な仕事だよね。

ーーーーーーーーーー
「って、またこれですか?」
また、女装セット。で、一組しかないわけで。しかも
「ぼくはもう着替えたからな。」
地味めな装いだけど、フツーじゃん。
ってことは俺がそれなのね。
「まあ、いいけど。」
慣れって怖い。
「もうすぐしたらギーゼラが化粧しにきてくれるから。」
「手回しのいいことで。」
呆れていると、鮮やかな笑顔を返された。
「デートだ。」
「はあ、こっちは男同士でも結婚できるんだろう?わざわざ女装しなくてもさ。」

コンコン
「陛下 閣下 入りますよ。」
「ああ、ギーゼラ頼んだよ。
じゃあ、ぼくは馬を回してくるから。」
「ちょ、ヴォルフラム。」



「陛下、このワンピース胸元にあしらっているお花がすごく素敵。」
ない胸をフォローするかのように、
柔らかい布をつまんで出来ている小さめのひまわりみたいな花が5つ横に並んでいる。
あ、これって
「 ユーリの天真爛漫 ですね。」
「うん。確かに似ているな。」
「きっと閣下が陛下のために作らせていたのじゃないんですか?」
「わざわざ?」
「ええ。その漆黒の御髪に黄色がこんなに似合うなんて、さすが閣下。素晴らしいセンスですわ。」
「でも、黒髪はカツラで隠すけどね。」
「できるだけ黒っぽいこげ茶のウィッグにしましたけど。」
うわ、サラサラのロングヘア…。
カラコンも装着して…

「さあ、ユーリ姫さま。お支度できましたよ。」
「姫さまって、ギーゼラ…」
「どこから見ても、素敵なレディーですよ。閣下のためにも お淑やか にお振る舞いくださいね。」
「ああ。」
「そこは はい ですよ。」

「はい、 行ってきます。」ギーゼラ姐さん。
「行ってらっしゃい。」


廊下にでると アチャー コンラッドがいるよ。

「あれ?君は?
って ひょっとして陛下?」

ここは一つなりきりの練習を。
「ごきげんようコンラッド。あなたの弟とお出かけしてきます。」
って、なにーっ?
「陛下 お手を。」
スカートの俺をすかさずエスコートするべく手を出す名付け親に、
「コンラッド、陛下ってばないで。名付け親でしょう?」
「そうでした、ではユーリ姫 ヴォルフラムのところまでどうぞ。」
また姫って…違和感のない動きでいつの間にか俺の右手がコンラッドの左肘に固定されてしまった。
たしかにこれの方が、足元の見えないスカートにまだ慣れてない俺は安心だ。
なるほど、エスコートって大事だな。
こんど俺もそういう場面に出たらやろう。

「それにしても、今日も本当に可愛らしい。」
「ど どうも。」
コンラッドが途中で立ち止まって壁に追いやられる。
うわ、壁ドン?さらに俺の顎を摘んできた。
「ねえ、ヴォルフラムと何処に行くの?」
「ま、街へ。」
「今度、俺ともデートしてくださいね。」
「そ、そんな。デートじゃないし。」
「でも、ヴォルフラムはデートだと思ってますよ。」
「ただ国民の様子を見に行くだけだよ。」
「なら、俺とも行けますね。」
銀の星の散った瞳がおれの視線を捉えて唇を重ねてくる。
「んんっ、コンラッド、わかったから、今日は離して。」

必死でコンラッドから逃れてエントランスに出るとヴォルフラムがいた。
「ユーリ、待ったぞ。」
「うん」
ほんと、口紅塗らなくて良かったよ。眞魔国の口紅って地球のと違って取れやすいんだ。
ヴォルフラムにコンラッドのキスのことがばれたらどうなることか。

…恐ろしい。

あ、馬。今日は栗毛のやつ。ヴォルフラムの白馬やおれのアオは目立つもんな。
栗毛だからつい
「マロンちゃん、よろしくな。」
栗毛の馬は気に入ってくれたのか頬ずりをしてきた。
「ユーリ、馬の名付けのセンスはいいな。龍はイマイチだったけど。」
は?
「こいつはまだ名前がなくて、28号って言われていたぞ。」
「そんな、鉄人みたいな。じゃあマロンちゃんで決定だ。」
マロンちゃんの頬を撫でていると先にヴォルフラムが乗って、上から手を差し出された。
「ほらユーリ姫行くよ。」
またもや、ふわっと横抱きに乗せられて手綱を持ったヴォルフラムの両手に包まれるような乗馬だ。なんか密着が半端ない。

「はっ」
ヴォルフラムの合図で馬が歩き出す。
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