■マ王■

□サラサラ2
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「ギュンター、おれ今日から この服にするから!いいよね!」

7月になって、さすがに学ランが熱くなってきた。
そりゃあ皆さんは軍人出身で鍛え方が違うらしいけど、地球の日本生まれのおれは無理!
ウニクロで5枚ぐらい真っ黒のポロシャツを買ってきた。もちろん半袖。

血盟城もクールビズといきましょう!

もちろん村田も賛成してくれて 紺色のポロシャツを着てくれたが よく見ると胸にパラソルのマークが ゴルフで有名なブランドで。
おれもクロコダイルとかそういうのにすればよかったかな。
まあ、地球のブランドにこだわっても仕方ないけどさ。

「陛下、なんてさわやかなんでしょう。もちろんいいですよ。一枚貸してください。血盟城でも数枚誂えさせましょう。」
「頼んだよ。」

ギュンターの許可が出たところで
「ユーリちょっといい?」
愛娘が朝食が食べ終わって話しかけてきた。
「グレタ?なんだい?」
「お仕事始まる前にちょっと見て欲しいものがあるの。」
そう言って手を繋いで俺を裏庭に誘う。

厨房の裏口に 竹に似た木が一本立っていた。
血盟城の中庭には三十本ほど持ち込んでいて、俺が今年から始める七夕の行事に合わせて、魔族語でみんなの願い事が書かれた色とりどりの短冊や、色紙で作られた飾りがぶら下がっていて、それはクリスマスツリーより賑やかになっていた。
それが、厨房の裏口の前にも一本立っていた。

「このお城のみんなで1本飾ったんだよ。」
「へー、ほんとだ、ギーゼラやダガスコス、アニシナさんまである。」
ん?グレタの手の届かない上の方には
【ユーリ陛下がコンラッド閣下と結ばれますように】
ゲゲっ (名付け)親と子だってば。
【ユーリ陛下がグエンダル様のものになりますように】
うおっ
【ユーリ陛下のヴォルフラム閣下との結婚式が今年には見られますように】
タラリ なんだこりゃ。

これは俺のトトやっている奴のか?

ほかには
【ユーリ陛下が俺に話しかけてくれますように】誰だこれ 無記名だ
【ユーリ陛下に接吻したい】だから 誰だよ って 無記名でよかったけどさ。

俺に絡んだ願い事ばっかり。
見なかったことにしよう

「グレタの願い事は?」
「これ!」
【ユーリとヴォルフラムの結婚式のヴェールガールになれますように】

「?ヴェールガール?」
「ユーリとヴォルフラムの結婚だと王家の結婚式だから、花嫁さんのヴェールはすごーく長いのだと思うの。それを引きずって歩くのは大変だから後ろでそれを引っ張って助ける子供の係がいるんだけど、女の子はヴェールガールで男の子はヴェールボーイっていうの。」
「なるほど じゃなくて、グレタ、俺とヴォルフラムの場合どっちも男だから、ヴェールはないかもよ。」
「エーそうなの?」
だいたいグレタはどっちがヴェールを引きずると思っているんだよ。

「でもね、リンジー君とかエル君とか ヴェールボーイの候補もいるからね、いつでも言ってね。」
満面の笑みで言われても…まあここはひとつ
「そうだな、ヴォルフラムに似合うドレスでも 考えといてよ。」ニヤリ。
「うん!グレタ いっぱい考えとく。」

「グレタ、ユーリに着せるドレスならもちろん黒がいいぞ。黒いドレスに真っ赤なバラをあしらったのを。」
…いつの間にヴォルフラム横から余計なことを。
「黒いドレスに赤いバラ!凄いね!見たい見たい!」
「そうだ、そんなのはユーリしか着れないからな。眞魔国の建国以来初めての色合いのドレスだ。それでドレスアップした美しいユーリの姿が拝めるなんて、その時の民は絶対幸せなはずだ。」

う っ そこで国民を出すのは卑怯じゃないですか?

「ヴォルフラム、ソロソロ会議か?」
「ああ、それもあるけど 僕の短冊をくくりに来たんだ。」
「ここに?」
「ああ 」
俺だけがここにこれがあることを知らなかったのか。
俺の気持ちに気がついたのか
「この木は、血盟城のみんながユーリがこの眞魔国で幸せになってもらいたいと、そういう内容の短冊を付けようと決めてここに置いたのだ。本当は中庭の真ん中に置くつもりだったのだが、身分の低いものも気兼ねなく参加できるようにここに置いたのだ。」
うわ、そんな なんかじんわりくるものがあるよ。
思わず繋いでいたグレタの手をちょっとギュッとした。
「ユーリ?」
そういえば どれもこれも
【ユーリが…】とか【陛下が…】とか 俺のことが書かれてある。

「ユーリ?」
「俺、すごく幸せだよ。グレタ、ヴォルフラム。」
「うん。」
「魔王になれてよかったよ。」
「ああ。」

「うわっ ユーリ? なあに?」
俺は思わずグレタをお姫様だっこに抱き上げた。
その俺ごとヴォルフラムが抱えてくれる。
「やっぱり俺たちがまず幸せじゃないとダメだな。」
「そうだ。僕はそのために なんでもしよう。地球(ほし)から来た王に、ユーリに 誓うよ。」
「ヴォルフラム」
俺の胸の中からグレタが腕を伸ばしてヴォルフラムを抱きしめている。

「ヴォルフラム、お前やっぱり男前だな。」
ふふっと鮮やかに金髪は微笑んだ
「愛しているよ、ユーリ、グレタ。」
「グレタも!」
「俺も二人のことがスッゲー好きだよ。もちろん眞魔国のみんなも。」

「さて、僕の短冊をグレタつけてくれるか?」
「うん!」
え?ヴォルフラムの短冊って グレタが見て良い内容なのか…?
って目に入った文字は
【シブヤユウリが健康で幸せでありますように】
…シンプルだけど、これは一番俺の心に響くな…。

なんか目が潤みそうで、でもグレタもいるから力一杯堪えた。
だってうっかり泣いたら今日は半袖だから目は拭きにくい。

改めて この国の王様を頑張らないと って眞魔国の初夏の朝日を仰いだ。

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◇あとがき◇
うちのヴォルフラムって本当にいい子やな。テヘヘ。
子ども好きな男子っていいよね。
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