■グエユ置き場■

□二人の思い出の
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二人の想い出の


また、グウェンダルの部屋にお邪魔している。なんか部屋の主が静かだから割と落ち着くんだ。

「あれ?これ…。」
書架の上の方にいくつかガラスの入った扉があって、高級そうな酒や古そうな書物など、
とくにグウェンダルが大事にしているだろう品々が整理されている。
その中になんか見覚えのある鉄の塊が。
「グウェンダル、これって スヴェレラの時の手鎖?」
「ああ。」
「なんでこんなもの置いてあるんだ?」
「これに限らず色々と捨てられないタチでな。いつもアニシナには怒られるんだが、これは私の戒めのために置いてあるんだ。」
「戒め?」
「砂漠で、ユーリが砂熊を見た時、私たち兄弟は油断していたのだ。
砂漠の風景が続いていたとは言え、砂熊が見えなくともすり鉢状に変化していた地形には気づいたはずなのだ。
それなのにあんな目にあって、魔王陛下を人間の砂漠の地にひき回したり辛い体験をさせてしまった。
もう、あんなことが2度とあってはならないと こうして目に止まるところに置いているのだ。」
「グウェンダル、戒めなんてそんな、あれは俺の判断がいちいち稚拙でみんなを危険な目にあわせたんだ。
俺にも責任があるんだよ。グウェンダルにずっと法力の満ちた地域で辛い目にあわせていたし、牢に入れさせてしまったし。」
「私は牢に閉じ込められてじっとしていただけだ。ユーリお前のように強制労働していたわけではない。」
グウェンダルがあの時のことを思い出しているかのように眉間のシワを増やして目をつぶっている。

「でも、あの体験があって俺はグウェンダルの人となりをちゃんと知ることができたんだ。」
そうだ、あれがなければ俺はこんな風に自分からグウェンダルの部屋にきてくつろいだりしていなかっただろうな。
もっと距離があった時のままだ。
「俺にも大事な思い出だよ。」
「ユーリ」
グウェンダルが近づいてきて俺の頭を撫でる。グレタへの扱いと変わらないんじゃ?とほんの少しブルーになっていると
顎を捉えられてグウェンダルの綺麗な青い瞳が近づいて …キスをされてしまった。
「…グウェンダル!」
「今思えば、ユーリ陛下の駆け落ち相手に間違われたなんて光栄なことだったのかもしれないな。」
「光栄って、こっちこそだよ。グウェンダル閣下。」

あの時、手鎖で繋がれていた方の手を出してグウェンダルの手に触れたら大きな手に包まれた。
「いつかまた 二人で何処かに行けたらいいな。」
「ああ、そうだな。」
「プライベートは難しいだろうけど、外交とか 仕事でそういう機会を作ればいけるかもしれないよ。」
「考えておこう。」

二人にしか分かり合えない思い出に浸るひと時だった。
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